ツンとしていて気まぐれ。
そんな印象を持たれやすいネコですが、じつは人間と深い信頼関係を築けることが研究で示されています。
しかも、その方法はとてもシンプル。
特別な道具もトレーニングも必要ありません。
あなたが「ある動作」をほんの少し変えるだけで、ネコはぐっと心を開いてくれるのです。
そのある動作とは「まばたき」です。
研究の詳細は2020年10月5日付で科学雑誌『Scientific Reports』に掲載されています。
目次
- まばたきを「ゆっくり」にする
- 見知らぬ人でも効果あり
まばたきを「ゆっくり」にする

英ポーツマス大学とサセックス大学の研究チームは、ネコとのコミュニケーションにおける「ゆっくりまばたき」の効果を科学的に調べました。
これまで飼い主の間では「ネコがよくする、目を細めてのんびり瞬きを真似すると、信頼されやすい」という体験談が広がっていましたが、それを実験的に検証したのは初めてです。
研究者たちはまず21匹の家庭ネコを対象に実験を行いました。
ネコが落ち着いているときに、飼い主が約1メートル離れた場所に座り、ネコと目が合った瞬間にゆっくりと目を細め、瞬きをしました。
その様子をカメラで記録し、比較対象として「まったく関与しない場合」の行動と比べました。
すると、飼い主からゆっくりまばたきをされたネコは、自らも同じ仕草を返す確率が有意に高まったのです。
「ゆっくりまばたき」はネコにとって、人間が敵意を持たないどころか、むしろ好意的であることを示すサインとして受け取られている可能性が示されました。
この「ゆっくりまばたき」は、ネコがリラックスして満ち足りているときによく見られる表情です。
人間が笑うときに目を細める仕草に似ていることから「ネコの笑顔」と呼ばれることもあります。
見知らぬ人でも効果あり

次に研究チームは、飼い主だけでなく「初対面の人間」に対しても同じ効果があるのかを調べました。
8世帯に暮らす24匹のネコを対象に、今度は飼い主ではなく研究者自身がネコと対面しました。
比較対象として「瞬きをせずにじっと見つめる」条件を設定し、もう一方では研究者が「ゆっくりまばたき」を行い、さらに手のひらを差し出してみました。
その結果、ネコは研究者のゆっくりまばたきに応じて瞬きを返すだけでなく、差し出された手に自ら近づいて触れる行動も多く見られたのです。
つまり「ゆっくりまばたき」は飼い主に限らず、初対面の人間との間でも信頼を築くサインとして機能することが確認されました。
この成果は、ネコの行動学においても重要な発見です。
ネコは犬ほどあからさまに感情を示さないため、長らく「人間とは距離を置く動物」と考えられてきました。
しかし近年の研究では、ネコが飼い主の感情を察したり、名前を聞き分けたりする能力が明らかになっています。
この研究もまた、ネコが人間と想像以上に深いレベルで関わっていることを示しています。
ネコとの絆を深めるには、高価なおもちゃや特別な訓練は必要ありません。
目を細めて、ゆっくりとまばたきをする。
それだけでネコは「この人は安心できる」と感じ、あなたに同じ仕草を返してくれる可能性が高まるのです。
参考文献
Scientists Reveal a Simple Technique to Communicate With Your Cat
https://www.sciencealert.com/scientists-reveal-a-simple-technique-to-communicate-with-your-cat
元論文
The role of cat eye narrowing movements in cat–human communication
https://doi.org/10.1038/s41598-020-73426-0
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部