クリトリスの血流を測定し、女性にとって最高の体位を科学的に検証!

クリトリス

最新の性科学により最も優れた体位が明らかになりました。

米国New H Medicalで行われた研究では、女性のクリトリスに超音波測定器具を装着して性行為中の血流変化を調べたところ、数ある体位のなかで「正常位」が最もクリトリスの血流を増加させていることが示されました。

セックスのノウハウを記述した様々な本が出版されていますが、体位とクリトリスの血流にもとづく性科学的な分析が行われたのはこれがはじめてだという。

しかし、いったいなぜ「正常位」が最もクリトリスの血流を増加させる効果があったのでしょうか?

研究内容の詳細は2022年7月5日に『Sexologies』にて掲載されています。

目次

  • 最新の性科学実験で女性にとって最高の体位が判明!
  • 腰を突き出す力と重力の方向の一致がクリトリスを充血させる
  • 性科学を笑うものは少子化に泣く

最新の性科学実験で女性にとって最高の体位が判明!

最新の性科学実験で女性にとって最高の体位が判明!
最新の性科学実験で女性にとって最高の体位が判明! / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

性科学とは人類種の性への関心や生殖行動・生殖機能を研究する極めて真面目な科学分野であり、医学・生物学・心理学・社会学などさまざまな分野を応用した研究が行われています。

セックス時の体位もまた性科学の分野が取り組んでいる課題の1つであり、妊娠しやすい体位の研究は不妊治療の分野でも活用が進んでいます。

しかし体位と快楽の関係については、未だ十分に解明されておらず、セックスのノウハウをまとめた民間の経験的知識に依存していました。

そこで今回、New H Medicalの研究者たちは、体位と女性の快楽の関係を解き明かす、科学的な実験を行うことにしました。

調査にあたっては健康なボランティアのカップルが募集され、女性のクリトリスに超音波測定器が取り付けられた状態で、10分間にわたり5種類の体位での性行為を行ってもらいました。

超音波測定器を用いることで、クリトリスの血流をリアルタイムで測定可能になります。

また指定された5種類の体位は「騎乗位」「座位」「後背位」そして女性の腰の下に枕を設置した「枕アリ正常位」と枕を設置しない「枕なし正常位」でした。

結果「騎乗位」「座位」「正常位」などカップルの顔が向き合える体位のほうが「後背位」など顔が向き合えない体位に比べて、クリトリスの血流がより多く増加していることが判明します。

また顔を向き合える体位の中でも「枕アリ正常位」において、最も著しい血流の増加が起きていたことが示されました。

クリトリスの血流増加は女性の快楽と深く関連していることが知られており、研究者たちは「枕アリ正常位」が女性にとって最高の体位であると結論しています。

しかし、いったいなぜ「顔が向き合うこと」と「枕」が重要になったのでしょうか?

腰を突き出す力と重力の方向の一致がクリトリスを充血させる

推力と重力の一致がクリトリスを充血させる
推力と重力の一致がクリトリスを充血させる / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

なぜ「向き合うこと」と「枕を設置すること」が重要なのか?

研究者たちは性交時の推力(腰を突き出す力)を提供するパートナーと重力の生体力学的関係が鍵になると述べています。

推力を提供するパートナーの「突き出す」動きが重力と同じ方向にある場合、より強く体が接するため、クリトリスへの接触刺激と血流増加が起こりやすくなります。

たとえば「騎乗位」の場合、推力を提供するのは主に上に乗っている女性であり、女性が腰を下に向けて突き出す動きが、重力の方向と一致します。

推力と重力の一致がクリトリスを充血させる
推力と重力の一致がクリトリスを充血させる / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

また「枕アリ正常位」の場合、男性が腰を突き出す方向は「枕ナシ正常位」より下向きとなり、重力の方向に一致するようになります。

特に市販のセックス専用の「くさび型の枕」の場合、女性の腰を効果的に持ち上げ、男性器の挿入を上から下に向けやすくする効果があることが知られています。

このように、腰を突き出す推力と重力の方向が一致する場合、体の打ち付けが強化され、クリトリスへの接触刺激も大きくなります。

一方で推力と重力の方向が一致しない後背位ではクリトリスの刺激頻度が低くなっていることが、観察により判明しました。

性科学を笑うものは少子化に泣く

性科学を笑うものは少子化に泣く
性科学を笑うものは少子化に泣く / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

今回の研究によって、女性のクリトリスの血流を増やすために有効な体位が判明しました。

さまざまな体位は生体力学的観点から異なる位置にあるクリトリスへの異なる刺激を提供し、多様な快楽をうみだします。

研究者たちは今回の研究結果を、性機能障害の治療に役立てることができると述べています。

性科学の研究が進めば、性行為において効果的な快楽をうみだせるようになるでしょう。

しかし日本の現状を考えると、それも簡単ではなさそうです。

日本では多くの人々が、性にかんする研究を行ったり研究結果を発表すること自体に、強い忌避感があります。

特に性的快楽を研究対象とする場合、調査を行う研究者だけでなく、実験に参加したボランティアに対しても色眼鏡をかけた評価を受けかねません。

世界で最も高齢化が進む日本において、一番必要とされる性的快楽の研究が忌避される現状は、非常に憂慮すべき事態と言えるでしょう。

快楽は性行為を行う最も強い動機であり、次世代をうみだす鍵となります。

性科学を軽視するものは少子化に泣くことになるでしょう。

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参考文献

Science nails the best sex position to help women achieve better orgasms
https://nypost.com/2022/07/06/science-nails-the-sex-best-position-for-the-female-orgasm/

元論文

Coital positions and clitoral blood flow: A biomechanical and sonographic analysis
https://doi.org/10.1016/j.sexol.2022.04.007

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部

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