「最近カフェインを控えたら、これまでにないほど鮮やかな夢を見るようになった」
そんな経験はありませんか?
カフェインを減らすことには、歯の着色を防いだりトイレに行く回数を減らしたりするなど、いくつかのメリットがあります。
しかし一方で、カフェインを減らすと「妙にリアルで生々しい夢を見やすくなる」と多くの人が語っています。
これは奇妙で、しかもかなり特異な効果です。
しかもカフェイン摂取を減らした数日以内にすぐ現れることも多いといいます。
では、本当に科学的な根拠があるのでしょうか?
目次
- カフェインが睡眠に与える影響
- なぜカフェインを断つと夢が鮮やかになるのか?
カフェインが睡眠に与える影響

カフェインは、私たちを目覚めさせる「覚醒作用」をもつ刺激物です。
仕組みは単純で、脳内の化学物質「アデノシン(adenosine)」の働きをブロックすることによります。
通常、アデノシンは日中の活動によって脳内に徐々に蓄積し、夜になると眠気を感じさせます。
そして睡眠中にアデノシンが分解され、朝にはスッキリと目覚めることができます。
ところがカフェインを摂取すると、アデノシンの信号を遮断してしまいます。
脳はアデノシンがあるのにそれを感じ取れなくなり、「眠い」というサインが弱まるのです。
そしてカフェインの効果が切れたとき、その反動で一気に眠気が強まる「カフェインクラッシュ」が起こります。
さらにカフェインは眠気を抑えるだけでなく、眠りを浅くしたり、深い睡眠(ノンレム睡眠)を減らしたりすることも知られています。
特に午後や夜にカフェインを摂ると、寝つきが悪くなったり、夜中に目が覚めやすくなったりします。
研究の結果は明確で、カフェインを摂る時間が遅ければ遅いほど、また量が多ければ多いほど、睡眠の質は悪化するのです。
なぜカフェインを断つと夢が鮮やかになるのか?
カフェインを減らすと夢がリアルになる。
この体験を語る人は多いですが、実は直接的に証明した研究はあまりありません。
多くの研究は「カフェインが睡眠そのものにどう影響するか」を調べており、「夢の内容」までは追っていないのです。
しかし、いくつかのヒントはあります。
カフェインをやめると、眠りが深くなり、夜中に目を覚ます回数も減ります。
その結果、体は「反動」としてレム睡眠の時間を増やす可能性があります。
レム睡眠(REM睡眠)は、体が休んでいる一方で脳が活発に働いている睡眠の段階です。
私たちが夢を見るのはこのレム睡眠のときで、時間が増えれば夢を見られる機会も増えます。
さらに、レム睡眠から直接目覚めると、夢の記憶が鮮明に残りやすいことがわかっています。
つまり、カフェインを減らすこと自体が夢を「作り出す」わけではなく、睡眠の質が改善し、レム睡眠が増えることで「夢を見やすく、覚えやすくなる」可能性があるのです。
もちろん、睡眠や夢は非常に複雑で、すべての人に同じ効果が出るわけではありません。
ある人はカフェインをやめても特に変化を感じないかもしれませんし、鮮やかな夢が続くのは数日から数週間程度という報告もあります。

カフェインの摂取量と夢の鮮やかさの関係は、まだ科学的に完全に解明されているわけではありません。
ですが、カフェインが睡眠を乱すことは確かであり、睡眠の質が夢の鮮明さに直結していることも知られています。
もし「最近、夢がやけにリアルだな」と感じているなら、それはカフェインを控えたことで、脳がレム睡眠の時間を取り戻そうとしているサインかもしれません。
眠りを整えるちょっとした工夫が、意外な夢の世界をのぞかせてくれるのです。
参考文献
Cutting Caffeine Could Do Something Weird to Your Dreams
https://www.sciencealert.com/cutting-caffeine-could-do-something-weird-to-your-dreams
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部