オウムはなぜ人間のマネをしてしゃべるのか?

オウム

海賊の船長が肩に乗せたい鳥ナンバー1に輝くオウムは、なぜ人の言葉でしゃべるのでしょうか?

人間の言葉をしゃべる動物というのは、よく考えるとかなり衝撃的な存在です。

オウムの声マネには一体なんの意味があるのか?

今回はそんな声を擬態する鳥「オウム」について解説していきます。

目次

  • 声の擬態にはどういう意味があるのか?
  • 鳥たちにとってのイケメンとは
  • 実は真似だけじゃない!言葉を理解している?

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声の擬態にはどういう意味があるのか?

いくつかの鳥が、人間の会話を模倣することはよく知られています。

中でも特に有名なのがオウムですが、なぜ彼らはそんな能力を獲得したのでしょうか?

これを理解するためには、まず鳥たちの独特の社会やコミュニケーション方法を知る必要があります。

たとえばウグイスは「ホーホケキョ」と鳴きますが、これはイヌの「ワンワン」や、ネコの「にゃーにゃー」という鳴き声の表現とは大きく異なります。

鳥はリズムや抑揚などを含め仲間の歌い方を学習する能力がある
鳥はリズムや抑揚などを含め仲間の歌い方を学習する能力がある / Credit:canva,ナゾロジー編集部

ウグイスは、何も考えずにただ鳴いたら「ホーホケキョ」になっているわけではありません。

彼らは抑揚やリズムを付けて、そのように「歌っている」のです。

では、どうしてウグイスはどこへいっても「ホーホケキョ」と鳴くのでしょう?

それは彼らが子どものとき、親や群れのリーダー的な鳥から種固有の歌声を聞いて学び、それを真似するからです。

そのため、幼鳥を親から隔離しておくと、異常な歌を発するようになります。

つまり、声の擬態とは、歌う種族である鳥類たちの社会性の一部であり、そのため彼らは生来、音を聞いて真似る能力に優れているのです。

鳥たちにとってのイケメンとは

もう1つ重要な要素は、彼らの歌には求愛の意味があるという点です。

鳴鳥(なきどり)と呼ばれるさえずりの美しい鳥たちは、主に求愛のために歌います。

1930年代には、科学者たちはオスの方が、メスよりも音の擬態能力に優れているということに気づきます。

これは主にオスが交尾のために、メスを引き寄せる目的で声を学習するためと考えられています。

彼らはモテる目的で歌がうまくなったわけです。

当然モテるオスは子孫を作る機会が増えます。

そのため進化の系統で継承されていくのは、歌の学習能力や再現能力の高い要素となっていくのです。

しかし、ここで1つ疑問が浮かびます。

ウグイスは常に「ホーホケキョ」と種族固有の歌を覚えるのに対して、オウムなどは全然関係ない人間という種族の言葉を真似します。

ここには大きな違いがあるように思えます。

なぜ、オウムは他種族の言葉を真似るのでしょう?

それはオウムという種族が、常に新しいものに惹かれる先進的な嗜好を持っていたためです。

伝統を重んじる鳥と聞いたことのない新しいものが好きな鳥。そこからオウムは分岐したのかも?
伝統を重んじる鳥と聞いたことのない新しいものが好きな鳥。そこからオウムは分岐したのかも? / Credit:canva,ナゾロジー編集部

人間でも歌を聞く場合、ボカロのような新しくて変わったタイプの楽曲に飛びつく人もいれば、「あんなもん歌じゃない!」と拒絶して新しい文化を受け入れられない人もいます。

言ってしまえば、ウグイスのような鳥たちは「クラシックしか音楽は認めない!」という一派であり、オウムは「今まで聞いたことのない新しいものが好き」という一派なのです。

当然オウムのメスも、古臭い歌より、聞いたことのない新しい歌を披露するオスに惹かれて子孫を残します。

そのためウグイスは種族伝統の歌を上手に覚えて真似ていったのに対して、オウムはこれまで聞いたことのない他種族の鳴き方を学習する能力と、それを再現できる幅広い声域を獲得していきました。

そして結果的に、オウムは聞き慣れない人間の話し言葉さえ、それを正確に学習してマネるようになったと考えられるのです。

事実、人に飼われていたオウムが野生に帰った際、覚えた人間の言葉を仲間に披露したことで、野生のオウムの間で人間の言葉が流行ってしまったという奇妙な事例がオーストラリアで報告されています。

実は真似だけじゃない!言葉を理解している?

オウムはもう何千年もの間、人間にペットとして飼われています。

彼らは、求愛行動や、また敵を威嚇する目的ではなく、人間の気を惹こうとして人間の言葉を使います。

しかも彼らは非常に幅広い数の単語を学習することも知られています。

本当に彼らは単に珍しい音を真似しているだけなのでしょうか?

オウムやインコをペットにしたことのある人は、「こいつ意味わかって言葉を使ってないか?」と不思議な感覚を覚えたことがあるのではないでしょうか。

オウム目の仲間で大型のインコに属する「ヨウム(Grey parrot)」という鳥に関する研究では、非常に興味深いことが観察されています。

科学者たちは、ヨウムが人間の発話を模倣しているだけではなく、数百の単語とその意味を学び、名前と関連付けてオブジェクトを認識して、さらには数えることさえできると報告しているのです。

人間の言葉を理解している節があるヨウム
人間の言葉を理解している節があるヨウム / Credit:Wikipedia

実際ヨウムの動画などを検索すると、数を数えたり、会話に近い形で言葉を操る様子がいろいろと公開されています。

オウムは単に音を模倣しているのではなく、実際に言葉を聞き分け、物を数えるなど、人間に類似した多くの能力を持っているのです。

多くの研究で、オウムは人間の飼い主から複雑な発声を効率的に学び模倣して、飼い主との社会的絆を強めるために言葉が重要であることを理解しているようだと報告しています。

鳥たちの持つ幅広い鳴き声(歌声)は、彼らの社会性から獲得されたものです。

人とともに暮らし、人の言葉を覚えたオウムたちが、人間の声を擬態して話しかけてくるとき、彼らはあなたとの絆を深めようとしているのです。

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参考文献

Why Do Parrots Mimic Human Speech?(scienceabc)
https://www.scienceabc.com/nature/animals/why-do-parrots-mimic-human-speech.html

ライター

海沼 賢: 大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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