AIの進歩には目を見張るものがありますが、本当に人間のような柔軟な知能を持つことはできるのでしょうか。
実は、多くのAIは「見たことのあるデータ」にはとても強いものの、初めてのタイプの問題や新しい状況には弱いという課題を抱えています。
こうした課題に挑戦するための新しい“知能テスト”が「ARC Prize(ARCプライズ)」です。
この中で出題される問題は、人間であれば比較的簡単に解けるものの、AIには難しいものです。
そんなAIの「本物の知性」を測る最前線のテストに、世界中の研究者と最新AIが挑んでいます。
しかも、誰でも実際にチャレンジできます。あなたはAIよりも賢いでしょうか。
目次
- AIの推論能力を測る「ARC Prize」とは?
- あなたも挑戦!ARC Prizeにチャレンジする方法
AIの推論能力を測る「ARC Prize」とは?
近年、AIは画像認識や文章生成などで目覚ましい成果をあげています。
しかし、それらの多くは膨大なデータをもとにした「パターンの暗記」や「統計的予測」に頼るもので、人間のように“初めての状況”でも柔軟に推論できるわけではありません。
そんなAIの限界に挑戦し、「人間の知性にどこまで近づけるか」を測るための新基準が「ARC Prize」です。
ARCとは「Abstraction and Reasoning Corpus(抽象化と推論の課題集)」の略。
ここで出される課題は、3×3や5×5といったマス目(グリッド)の「入力」と「出力」のセットが数例示され、そのルールを見抜いて未知の問題に正しく答える、というものです。
たとえば「図形の色がどう変わるか」「どの部分がコピーされるか」など、一見シンプルですが、そこに隠れたルールを自分で発見する必要があります。
人間であれば「なんとなくわかる」「ひらめく」問題でも、AIにとっては非常に難しいものです。
実際、2025年時点のAIでも、多くのARC課題はまったく歯が立たない状況が続いています。
「初めて見るルール」や「複数のルールが組み合わさる問題」になると、とたんに正解率が下がり、人間の柔軟な思考との差が浮き彫りになります。
このギャップを埋めようと、世界の研究者やAIエンジニアが競い合っています。
最初に85%以上の正解率を記録したチームには賞金が用意されるなど、大きな注目が集まっています。
そしてこのARC Prizeの問題は公開されており、誰でも挑戦することができます。
次のページでその方法を解説します。
あなたも挑戦!ARC Prizeにチャレンジする方法
この最先端の知能テスト「ARC Prize」の課題は、一般の人でも公式ページから挑戦できます。
手順はとてもシンプルです。
- ARC Prizeの公式「Play」ページ(https://arcprize.org/play)にアクセスし、スタートさせます。
- サンプルとして入力と出力の例が2~3つ並んで表示されます。
- 「テスト」用の入力マス目が用意されているので、例からルールを見抜いて、出力を自分で作成します。
- 「Submit solution」ボタンで答え合わせもその場でできるので、すぐに自分の推論力を試せます。
操作はドラッグやクリックでマス目に色を塗ったり、パターンをコピーしたりするだけ。
プログラムや複雑な英語の知識は一切不要です。
実際にやってみると、「人間ならではのひらめき」が大きな武器になることを実感できるはずです。
最先端AIはこのARC Prizeの難問に苦戦し続けています。
もしあなたがすんなりルールを発見できたら、まさに「今のAIより賢い」証拠になるかもしれません。
「AIは本当に人間の知能を超えるのか?」という問いの答えは、まだ簡単には出せません。
でも、このARC Prizeは、人間の知性とAIの可能性の“境界線”を、あなた自身の手で体感できる貴重な機会です。
さあ、あなたはAIより賢いでしょうか?試してみてください。
参考文献
Are You Smarter Than an AI?
https://spectrum.ieee.org/arc-prize-agi-test?utm_source=homepage&utm_medium=hero&utm_campaign=2025-09-22&utm_content=hero2
ARC Prize
https://arcprize.org/
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。
編集者
ナゾロジー 編集部