【9/22は世界サイの日】絶滅危機のジャワサイとスマトラサイが50頭以下に

9月22日は「世界サイの日(World Rhino Day)」です

この日は、絶滅の危機に直面するサイの現状と、彼らを守るための活動を世界中で考える日となっています。

では、現在絶滅の危機に瀕しているサイたちは、どんな状態でしょうか。

国際自然保護連合(IUCN)の報告によって、アジアの「ジャワサイ(学名:Rhinoceros sondaicus)」と「スマトラサイ(学名:Dicerorhinus sumatrensis)」がそれぞれ50頭以下まで減少しているという非常に厳しい現実が明らかになっています。

この評価は3年ごとに公表されているもので、2025年8月7日掲載されました。

目次

  • 「密猟」で激減したジャワサイ
  • スマトラサイも「消滅寸前」だが一筋の光

「密猟」で激減したジャワサイ

かつてアジアの広い範囲に生息していたジャワサイは、今ではインドネシアのウジュン・クロン国立公園にしか残っていません。

しかも2021年時点で76頭いたジャワサイは、わずか数年で密猟によって50頭まで激減しました。

これは、近年少しずつ増えてきた個体数が一気に逆戻りする非常事態です。

この減少の最大の原因は「密猟」です。

現地の調査によれば、地元住民を含む密猟グループが角を狙い、特にオス(角が大きい)を中心に約26頭を殺害したとされています。

サイの角は東南アジアや中国の一部で伝統医療や富の象徴とされ、高値で取引されています。

そのため、密猟者たちはリスクを承知で武装して公園内に侵入。

カメラトラップが次々と行方不明になり、残ったカメラには武装した人物が映るなどの事件が続きました。

その後の警察の捜査により、密漁に関与した13人が逮捕されることになりました。

それでも、この密猟は「殺された個体数」以上の影響を及ぼしました。

主にオス個体が狙われたことにより、性比の偏りや、繁殖力そのものの低下、遺伝的多様性の喪失といった深刻な問題が同時に進行しているのです。

ジャワサイは妊娠期間が約16か月と非常に長く、もともと個体数の回復が遅い動物です。

こうした構造的な課題が今後の保護をさらに難しくしています。

密猟が発覚して以降、公園ではパトロールの強化や監視体制の見直しが進められ、以前より警備体制も大きく強化されました。

ただし、角は依然として高値で取引されており、密猟をゼロにする完全な方法はまだ確立されていません。

一方で、ここ2年で6頭のジャワサイの赤ちゃんが誕生するなど、絶望的な状況の中にも小さな希望が見えています。

インドネシア政府は、ジャワサイでもスマトラサイと同様に「飼育下繁殖プログラム」の開始を検討しており、新たな保全策の準備も進められています。

スマトラサイも「消滅寸前」だが一筋の光

同じく絶滅が危惧されているのがスマトラサイです。

このサイは体毛が多く、絶滅したケナガサイの近縁種でもあります。

スマトラサイは今、世界にわずか推定34~47頭しか残っていません。

ここ3年は推定値が横ばいのままで、個体数は極めて低い水準が続いています。

スマトラ島北部やボルネオ島の深い森に生息していますが、密猟や生息地の消失、個体間の距離が遠いことなどが複合的に影響し、繁殖そのものが非常に難しい状況にあります。

さらに、残った個体は近縁同士が多いため、遺伝的多様性の低下が大きな課題です。

保全団体による飼育下繁殖プログラムも進行中で、現在11頭が飼育されていますが、これらの個体はほとんどが親戚同士。新たな「血」がどうしても必要とされています。

その中で、最近になって希望が見え始めています。

2025年、スマトラ島南部で保全犬が発見した糞が「スマトラサイ由来である可能性が高い」との検査結果が出ました。

最初の検査はクリアしており、確定にはあと2つの検査が必要です。

もし本当に南部にも生存個体がいることが確認されれば、飼育下繁殖プログラムに新たな遺伝的多様性を持つ個体を迎え入れられる可能性が高まります。

関係者も「ジャワサイもスマトラサイも、かつては20頭台からの回復経験があり、絶滅は避けられる」と語っています。

今は保護活動の正念場であり、現場では日々小さな命が生まれ、スタッフが懸命に活動を続けています。

そしてサイの未来は、世界中の人々の行動や関心にかかっています。

国際社会の協力や支援、保全団体への参加や寄付があれば、彼らは再び回復する可能性を持っているのです。

「世界サイの日」をきっかけに、絶滅寸前のサイたちが今どんな現実に直面しているのか、私たちができることは何か、考えてみることも大切でしょう。

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参考文献

Javan rhino numbers plunge; Sumatran rhinos remain near extinction: Report
https://news.mongabay.com/2025/08/javan-rhino-numbers-plunge-sumatran-rhinos-remain-near-extinction-report/

Poaching of African rhinos down – but drought and other threats drive losses globally
https://iucn.org/press-release/202508/poaching-african-rhinos-down-drought-and-other-threats-drive-losses-globally

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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