インドのマディヤ・プラデーシュ州に住むラリット・パティダールくん(18歳)が、「世界一毛深い顔」としてギネス世界記録に認定されました。
この「多毛症」は非常に稀な疾患であり、これまでに世界で50例程度しか報告されていません。
見た目に大きな影響を及ぼすこの疾患を抱えていても、ラリットくんは前向きです。
彼の物語は、医学的な研究対象としての興味だけでなく、個性を受け入れ、社会的理解を深めるための重要な事例といえるでしょう。
目次
- まるで狼男!?希少な「先天性多毛症」とは?
- 「世界一毛深い顔」をもつ青年がギネス記録に認定!
まるで狼男!?希少な「先天性多毛症」とは?

ラリットくんが患う先天性多毛症は、生まれつき全身の毛が異常に成長する疾患で、俗に「狼男症候群」とも呼ばれます。
医学的には極めて稀な症例であり、現在のところ世界で確認されているのは50例程度にとどまります。
10億人に1人の特別な存在なのです。
彼の顔は医学的測定の結果、顔全体の95%が毛で覆われていると確認されました。
多毛症には先天性と後天性があり、先天性のものは遺伝子変異が主な原因とされています。
一方、後天性多毛症は、ホルモン異常、特定の薬剤の副作用、または腫瘍などが影響して発症することがあります。
例えば、過去には、脱毛症治療薬が誤って投与され、一時的に全身の毛が濃くなる事例がありました。

しかし、ラリットくんの場合は生まれつきの症状であり、医学的にも極めて珍しいケースといえます。
彼は幼少期から見た目の違いにより多くの困難に直面しました。
両親によると、生まれたときに医師が毛を剃りましたが、彼自身が他の子どもと異なることを意識し始めたのは6歳か7歳の頃だったといいます。
その頃から、体中の毛がさらに濃くなり、周囲の視線を強く感じるようになりました。
学校では、クラスメートにじろじろ見られたり、時には心ない言葉を浴びせられることもあったそうです。
それでも彼は前向きな見方を保ちました。
「世界一毛深い顔」をもつ青年がギネス記録に認定!

ラリットくんはつらい経験もしましたが、周囲の人々と積極的に関わろうとしました。
彼はこう言っています。
「最初はみんな僕のことを怖がっていましたが、僕のことを知り、僕と話すうちに、自分たちとそれほど変わらないと理解してくれるようになりました。
見た目が違っているだけで、中身は変わっていないのです」
現在、彼は多くの友人に囲まれ、学校生活を楽しんでいます。
また、自身のYouTubeチャンネルを持っており、日常生活やヘアケアの様子を公開することで、多毛症に対する理解を深めてもらいたいと考えています。
そして2025年2月、ラリットくんはギネス世界記録に挑戦するため、イタリアのミラノを訪れました。
世界的なテレビ番組「Lo Show dei Record」に出演し、毛髪学者による診察を受けた後、顔の一部の毛を剃り、密度を測定しました。
彼の毛は、1平方cmあたり201.72本も生えていました。

この診察により、正式に「世界一毛深い顔」の持ち主としてギネス世界記録に認定されました。
ラリットくんは次のように語っています。
「何と言っていいのかわかりません。このような認定を受けることができて本当にうれしいです」
さらに「僕は自分のありのままの姿が好きで、見た目を変えたいとは思いません」と続けています。
彼は今後もYouTubeなどを通じて、多毛症についての認知を広める活動を続けていくでしょう。
そして、その前向きな姿勢は多くの人に勇気を与えていくはずです。
参考文献
Indian teenager with one in a BILLION werewolf syndrome breaks hairiest face record
https://www.guinnessworldrecords.com/news/2025/3/indian-teenager-with-one-in-a-billion-werewolf-syndrome-breaks-hairiest-face-record
Teen sets record for hairiest face in the world — with 95% of it covered
https://nypost.com/2025/03/08/world-news/lalit-patidar-sets-guinness-world-record-for-hairiest-face/
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部