「太るのは運動していないから」
そう思い込んでいる方は多いかもしれません。
確かに、座りっぱなしの生活や運動不足は健康に良くないです。
しかし実は私たちの体に脂肪がつく一番の原因は、運動不足とは別にあるようです。
米デューク大学(Duke University)の研究チームは、世界34の地域に住む成人4213人を対象とした調査で、肥満の1番の原因は「食生活」にあることを発見しました。
さて、どんな食事が最も肥満を助長するのでしょうか?
研究の詳細は2025年7月14日付で科学雑誌『PNAS』に掲載されました。
目次
- 太るのは運動不足だからじゃない?
- カギを握るのは「食べすぎ」、特に“あの食品”!
太るのは運動不足だからじゃない?

研究チームは今回、狩りをして暮らす狩猟民族から、作物栽培で暮らす農耕民族、また牧畜民族から現代の都市社会に暮らすデスクワーカーなど幅広い層の人々を対象に、体の大きさ・消費エネルギー・体脂肪の割合を測定しました。
その結果、経済的に発展している国ほど肥満が多いことがあらためて確認されています。
体脂肪率やBMI(ボディマス指数)が高い人が多く、特に女性にその傾向が強く見られたのです。
では、これは運動不足のせいなのでしょうか?
研究者たちは、1日の消費カロリーを「基礎代謝(生きているだけで消費する分)」「活動による消費(運動など)」「総エネルギー消費」に分けて測定しました。
すると驚くべきことに、先進国の人々は発展途上国よりも、実は多くのカロリーを使っていたことがわかりました。
運動による消費カロリー(AEE)も、経済の発展度に関係なく一定か、それ以上だったのです。
つまり「運動しないから太る」というシンプルな話ではないことが明らかになったのです。
カギを握るのは「食べすぎ」、特に“あの食品”!
では、なぜ先進国の人々の方が太っていたのでしょうか?
答えは「食べる量と質」にありました。
調査対象の一部では、食事に占める超加工食品(UPF:ウルトラプロセスドフード)の割合も記録されていました。
このUPFとは、スナック菓子、清涼飲料水、冷凍食品、レトルト食品など、加工工程が多く、味や見た目が工夫された食品のことです。
すると、超加工食品を多く食べている人ほど体脂肪率が高いという相関が見つかりました。
逆に、肉の消費量などはそれほど肥満と関係がなかったのです。
超加工食品は「とにかく美味しく、つい食べすぎてしまう」ように作られています。
さらに消化しやすく、体に吸収されやすいため、摂取カロリーのうち多くが脂肪として蓄えられやすいという特徴もあります。
つまり、「どれだけ運動するか」よりも「何をどれだけ食べているか」が、体脂肪のつき方により大きく影響していたのです。

この研究は、肥満の背景にあるのが「運動不足」ではなく、「食生活の変化、とくに超加工食品の増加」であることを世界規模で示した画期的なものです。
もちろん、運動が不要というわけではありません。
運動は心臓病の予防やメンタルヘルスの改善など、多くの健康効果をもたらします。
でも「太らないためにはジムに通えばいい」という考え方だけでは足りないのです。
大切なのは、普段の食生活を見直すこと。
特に、加工度の高い食品を「手軽だから」「美味しいから」と無意識に食べ続けている人は、一度その習慣に目を向けてみる必要があるかもしれません。
参考文献
Obesity more likely caused by high calorie diet than lack of exercise
https://medicalxpress.com/news/2025-07-obesity-high-calorie-diet-lack.html
元論文
Energy expenditure and obesity across the economic spectrum
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2420902122
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部