【合金より強い木】プレスなしで「自ら密度を高める」超高強度木材が誕生

サイエンス

私たちの身の回りにある木材は、家具や家屋に使われる自然素材として、温かみがあり加工しやすく、環境にも優しいというメリットがあります。

しかしその一方で、強度や耐久性の面では金属やプラスチックに劣るという欠点があります。

ところが、中国の南京大学(Nanjing University)の研究チームがこの常識をくつがえす画期的な木材を開発しました。

この新しい木材は、なんとアルミニウム合金や鋼鉄よりも強くて軽いというのです。

しかも、これまでの強化木材に必要だった高温圧縮処理を一切行わずに高い強度を実現しており、人々の注目を集めています。

研究の詳細は、2025年3月12」日付の学術誌『Journal of Bioresources and Bioproducts』に掲載されました。

目次

  • 木材強化の常識をくつがえす「自己密化」
  • 鋼より強く、釘にしても折れない「超ウッド」が誕生

木材強化の常識をくつがえす「自己密化」

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軽くて加工しやすい木材 / Credit:Canva

木材は古来より建築や家具、道具などに幅広く用いられてきました。

その理由は、軽量で加工しやすく、再生可能な自然素材として扱いやすいからです。

しかし強度や耐久性の面では、鉄やアルミニウムなどの金属、あるいはカーボンファイバーやガラス繊維のような人工素材に比べて劣っていました。

近年、軽量かつ高強度な構造材が求められる中で、木材を強化する技術の研究が進んできました。

中でも代表的なのが圧密化という方法であり、木材に薬品処理を施したのち高温高圧で繊維に対して垂直な方向に圧縮することで強度を高めます。

これにより作られた「圧縮木材」は、天然の木材よりはるかに硬くて強くなります。

しかしながら、この圧縮木材にはいくつかの課題がありました。

たとえば加工には大量のエネルギーが必要となるため、コストが高くなります。

また、一方向にしか強くならないため他の方向からの力には弱い場合があり、さらに圧縮後に寸法が安定しないという問題もありました。

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木材が自ら密度を増す手法を開発 / Credit:Dafang Huang(Nanjing University)et al., Journal of Bioresources and Bioproducts(2025)

これらの課題を解決するために、研究チームが開発したのが熱や圧力を使わずに木材を密化させる「self-densification(本記事では自己密化と呼ぶ)」という手法です。

この方法では、まず木材から部分的にリグニン(結合剤のような成分)を取り除きます。

その後、セルロース繊維と残りのリグニンを特殊な溶剤(LiCl/DMAc)に浸します。

それらを10時間自然乾燥させると、繊維同士が自ら引き寄せ合い、高密度に再配置されます。

つまり、木材内部の繊維が自発的に動き、自然に密に並び直すことで外部圧縮を使わずに強度が増すという仕組みになっています。

では、この新しい材料は、どれほどの強度を持っているのでしょうか。

鋼より強く、釘にしても折れない「超ウッド」が誕生

新しく開発された「自己密化木材」がどれほど優れているのか、具体的な性能を見ていきましょう。

まず、引っ張り強度は496.1MPaに達しており、これは天然木材のおよそ9倍に相当し、アルミニウム合金と同程度の強度です。

曲げ強度は392.7MPa、衝撃靭性は75.2kJ/m²と、従来の木材の限界をはるかに超える性能を示しています。

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均等に収縮 / Credit:Dafang Huang(Nanjing University)et al., Journal of Bioresources and Bioproducts(2025)

とくに注目すべきは、木材がすべての面から内側に均一に収縮するため、元の木材の比率が維持されるという点です。

従来の方法では得られない、「全方向に対してバランスよく強度が高まる」という理想的な構造が実現できています。

まるで天然の木材が自ら鍛え直されたかのように、強度にムラがなく、どの方向からの力にも耐えることができるのです。

さらに、従来のようにエネルギーを大量消費する高温圧縮プロセスを必要としないので、より安価な材料になります。

加えてこのプロセスでは軽量性も維持することが可能です。

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自己密化木材で作った釘。スチール製より堅く、他の木材を簡単に貫通する / Credit:Dafang Huang(Nanjing University)et al., Journal of Bioresources and Bioproducts(2025)

そして研究チームは、デモンストレーションとして、この自己密化木材を使った「木製の釘」を試作しました。

この釘はスチール製の釘よりも硬く、下穴を開けずに木板に打ち込むことができ、しかも釘自体が壊れることはありませんでした。

この特性は、金属に代わる新素材としての可能性を大いに示しています。

環境負荷を低減し、持続可能な社会を目指すうえで大きな意味を持つでしょう。

将来的には、軽くて強い建築資材としての利用や、金属に代わる機械部品や工具、さらにはリサイクルが容易なエコ素材としての展開が期待されています。

人類が長い歴史の中で親しんできた「木」という素材が、科学の力によってまったく新しい段階へと進化を遂げようとしています。

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参考文献

Self-densified super-strong wood: a sustainable alternative to traditional structural materials
https://www.eurekalert.org/news-releases/1077842

“Self-densified” wood could give metal a run for its money
https://newatlas.com/materials/self-densified-wood/

元論文

Self-densified super-strong wood
https://doi.org/10.1016/j.jobab.2025.03.001

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

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