雷が落ちる場所を人間がコントロールできるとしたら──。
そんなSFのような技術が、ついに現実になろうとしています。
2025年4月18日、NTTが発表したのは、雷を人工的に誘発・誘導することに世界で初めて成功したという驚きの成果です。
その鍵を握っていたのは、なんと特殊な耐雷性能をもつドローンでした。
この「空飛ぶ避雷針」は、風力発電施設や屋外イベントなど、避雷針を設置しにくい現場での被害軽減に活用される可能性を秘めています。
では一体、どのような仕組みで雷を操るのでしょうか?
目次
- 空撮だけじゃない、ドローンの新たな使命は「雷を操ること」!?
- 世界初!耐雷ドローンによる雷の誘発・誘導に成功!
空撮だけじゃない、ドローンの新たな使命は「雷を操ること」!?
ドローンはここ数年で急速に普及し、農薬散布、物流、空撮、インフラ点検など、さまざまな用途で活躍するようになりました。
その機動性と柔軟性を活かして、人の手が届かない場所での作業を可能にしています。

しかし、今回NTTが取り組んだのは、従来の「作業支援」ではなく「自然現象のコントロール」です。
背景には、年々深刻化する雷災害があります。
NTTグループの通信設備をはじめとする重要インフラには様々な落雷対策が施されていますが、今日に至っても被害は無くなっておらず、被害額は日本だけでも毎年1000億円から2000億円と推定されています。
従来の雷対策としては、避雷針が良く用いられていますが、避雷針が雷を受ける範囲は限定的です。
そもそも避雷針を設置すること自体が困難なケース(風力発電所や野外のイベント会場など)も多く、より柔軟な対応策が求められていました。

そこで登場したのが、NTTの研究チームによる「雷を誘導するドローン」です。
このドローンは、雷雲の下で意図的に雷を誘発させ、安全な方向へ導くという前例のない試みに挑んでいます。
そしてついに、NTTは世界初となる成功例を報告しました。
世界初!耐雷ドローンによる雷の誘発・誘導に成功!

この実験で使用されたのは、雷撃に耐えるよう設計された「耐雷ドローン」です。
ドローンで雷を誘導するには、雷が落ちてもドローンが飛行し続ける必要があります。
そのため、機体には金属製のシールドである耐雷ケージを取り付けました。
これにより、ドローンに雷が直撃した際の大電流はドローン本体を避けて迂回され、地上へと送られます。

また、電流を放射状に流すことで、この時に発生する強い磁界も互いに打ち消し合うようにし、ドローンへの影響を低下させています。
そしてこの耐雷ドローンを雷雲の下に飛行させ、地上からワイヤを伸ばすことで雷を誘発します。
雷を誘発させるために地上側に高圧スイッチが取り付けられており、操作することでドローン周辺の電界強度を上昇。雷の誘発を促すのです。

そして2024年12月~2025年1月に島根県の山間部の標高900m地点で行われた実験では、実際に破裂音や発光と共に雷がドローンに落ちる様子が観測され、機体がその電流を安全に地面へと導きました。
雷の衝撃で耐雷ケージの一部が溶けたものの、ドローン自体の飛行性能には問題はなく、そのまま任務を継続できたとのこと。

NTTは世界で初めて、ドローンを使用した雷の誘発・誘導に成功したのです。
この成果は、単なるドローン技術の進歩にとどまりません。

雷という制御不能と思われていた自然現象を、部分的にでも「誘導」できることを示した点で、気象制御や災害予防の分野に大きなインパクトを与えます。
NTTは今後、この技術をさらに発展させ、ドローンを用いて街を雷被害から守り、同時に雷エネルギーを蓄積できる世界を目指します。
参考文献
世界初、ドローンを使用した雷の誘発・誘導に成功 ~空飛ぶ避雷針として街やインフラ設備を守り、雷被害ゼロの社会をめざす~
https://group.ntt/jp/newsrelease/2025/04/18/250418a.html
Faraday-caged drone triggers and directs lightning strikes
https://newatlas.com/drones/faraday-caged-drone-lightning/
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部