全身が鎧のような装甲で覆われ、棍棒のような尾を持つ「アンキロサウルス」は、そのユニークな見た目から非常に人気の高い恐竜です。
その一方で、アンキロサウルス科の「足跡化石」は意外にも、今まで世界で見つかっていませんでした。
しかし今回、カナダ・ビクトリア大学(University of Victoria)の研究により、ついにアンキロサウルス科の足跡化石が初めて発見されました。
果たして、どんな足跡だったのでしょうか?
研究の詳細は2025年4月14日付で科学雑誌『Journal of Vertebrate Paleontology』に掲載されています。
目次
- アンキロサウルス類は「指の数」で見分けられる?
- ついにアンキロサウルス科の足跡を発見!
アンキロサウルス類は「指の数」で見分けられる?

背中に鎧のような骨板をまとい、尾に巨大なこん棒を携えたアンキロサウルスは、恐竜ファンにはおなじみの存在です。
しかし意外なことに、その足跡が科学的に特定されたことはこれまで一度もありませんでした。
ただし”アンキロサウルス類”として大きく括ると、足跡の発見例はあります。
具体的に説明しますと、鎧竜類(アンキロサウルス類)には大きく分けて、「ノドサウルス科」と「アンキロサウルス科」の2つのグループがあります。
ノドサウルスも同じく、鎧のような装甲に覆われた4本足の草食恐竜ですが、特徴的なのは足の指の数が4本であることです。
北米地域ではこれまで、4本指のノドサウルスの足跡化石はよく見つかっており、この種は「テトラポドサウルス・ボレアリス(Tetrapodosaurus borealis)」として知られていました。

対するアンキロサウルス科の足の指の数は3本であることがわかっています。
そして同じ北米に住んでいたはずのアンキロサウルス科の足跡はこれまで見つかっていませんでした。
しかし今回ついに、カナダ・ブリティッシュコロンビア州とアルバータ州北西部で「3本指の足跡化石」が見つかったのです。
ついにアンキロサウルス科の足跡を発見!

2023年から続く詳細な分析の結果、チームは新たに見つかった3本指の足跡化石がアンキロサウルス科のものであることを特定しました。
指の先は丸く、踵(かかと)は丸いものや二股に分かれたものも確認されました。
さらに前足の形状や足の向き、歩幅から体長はおよそ5〜6メートル、腰高は約120センチと推定されています。
そしてチームはこの足跡の持ち主に、”棍棒を持つ倒れたトカゲ”を意味する「ルオポドサウルス・クラーヴァ(Ruopodosaurus clava)」という学名を与えました。

特筆すべきは、アンキロサウルス科はこれまで骨の化石では白亜紀後期(約8000万年前以降)からしか確認されていなかったことです。
しかし今回の足跡化石の年代は、約9400万〜1億年前のものであることがわかりました。
つまり、この足跡はそれより約2000万年も前に北米でアンキロサウルス科が生息していたという、新たな証拠となったのです。
そしてこの年代は北米のノドサウルスの生息年代とも合致することから、2つのグループが同じ時代に同じ場所で共存していたことを指し示しています。
今回の結果を受けて、研究チームは恐竜の骨化石だけに頼らず、足跡化石によって絶滅動物の進化や分布を見直す重要性を訴えています。
実際の遺体や骨だけでなく、足跡の化石も私たちに太古の物語の秘密を教えてくれるのです。
参考文献
Footprints of tail-clubbed armored dinosaurs found for the first time
https://www.eurekalert.org/news-releases/1080217
元論文
A new thyreophoran ichnotaxon from British Columbia, Canada confirms the presence of ankylosaurid dinosaurs in the mid Cretaceous of North America
https://doi.org/10.1080/02724634.2025.2451319
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部