真っ暗な空に浮かぶ物体とそこから地上に放射される強烈な光。
きっと「UFOを見た!」という人も出てくるでしょう。
しかしその正体は、未確認飛行物体ではなく、Freefly Systems社が開発した新型ドローン「Flying Sun 1000」かもしれません。
このドローンは、なんと空中から強力なLEDライトを照射できる“飛ばす投光器”または”飛ぶ太陽”なのです。
最近発表されたばかりのこの装置は、照明技術とドローン技術の融合によって、これまでにない可能性を示しています。
目次
- 投光器を”空に設置する”というアイデア
- まるでUFO「Flying Sun 1000」の実力と可能性
投光器を”空に設置する”というアイデア

夜中の道路を車で走っていると、強烈な光の中で作業員たちが工事をしている姿を目にするかもしれません。
夜間の工事現場では、作業の安全性と効率を確保するために、非常に明るい投光器が欠かせません。
これらの投光器は通常、地面に据え置いた大型の三脚やポールに取り付けられ、広範囲を照らすよう設計されています。
しかし、照明の設置には多くの手間がかかり、現場内のスペースを圧迫することもあります。
また、高所からの照明を実現するには大型のクレーンや重機が必要となり、コストや作業時間が増大してしまいます。
この問題は、屋外撮影やイベント照明でも同様です。
そして、視界や背景に機材が映り込むことや、照明の角度が限定され陰ができやすいといった問題が付きまといます。

こうした課題を根本的に解決するために、「照明を空に浮かべてしまおう」という発想が生まれました。
技術の進化により、近年のドローンはカメラを積んで飛行するだけでなく、照明機材そのものを搭載し、空中で留まることが可能になっています。
その結果生まれたのが、「Flying Sun 1000」です。

この機体には強力な発光ユニットと、振動が抑えられた4つのプロペラが搭載されています。
そして、Flying Sun 1000が上昇したり移動したりする様子は、まさにUFOのようです。
では、この「飛ばせる投光器」であるFlying Sun 1000は、どれほどの性能を持っているのでしょうか。
まるでUFO「Flying Sun 1000」の実力と可能性

Flying Sun 1000の最大の特徴は、空中から30万ルーメンの光を照射できる点にあります。
これは下向きに取り付けられた合計288個のLEDライトによって実現しています。
一般的な家庭用LED照明が3000~4000ルーメン前後であることを考えると、このドローン1台で100倍以上の光量を空から届けることができると分かります。
60度のスポットライトを利用しており、ドローンが上昇するにつれて照明範囲が広くなり、強度は弱まります。

例えば、高度96mの照射範囲は12728平方メートルにもなりますが、強度はかなり弱くなります。
大抵の場合はもっと範囲を狭くして(高度を下げて)利用することになるでしょう。
当然ながらLEDは大量の電力を消費します。
そのため、このパッケージにはリール式の電気ケーブルが付属しており、外部電力とドローンを繋ぐことで稼働させ続けられます。
ちなみに、ドローン本体のバッテリーだけだと、約5~10分間しか稼働できません。
この機体は現在予約受付中であり、価格は59,995ドル(約881万円)となっています。
用途としては、映画やテレビ撮影の撮影、夜間工事、大規模イベントでの仮設照明としての利用が期待されています。

また「広範囲を照らしながら飛行する」ことで、警備や捜索救助などでも利用できます。
ただし課題もあります。
固定されていないため、風速や天候の影響を受けやすくなります。
また空中に強力な光源があるため、周囲への光害やドローンの視認性の確保といった新たな安全対策も求められるでしょう。
それでも、空から光を届けるというこの技術は、「照明=地面から照らすもの」という常識を覆す革命になるかもしれません。
そしてなにより、ホバリングするその姿が「どう見てもUFO」であるという点が、私たちの心をワクワクさせてくれます。
参考文献
Mobile drone lighting system uses 288 LEDs to turn night into day
https://newatlas.com/drones/freefly-systems-flying-sun-1000-drone-lighting/
FLYING SUN
https://freeflysystems.com/flying-sun
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部