「1日1万歩」神話が崩れる!”もっと少ない歩数”で死亡リスクが47%減

がん

「健康のために1日1万歩歩こう」

そんな言葉を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?

しかし、2025年7月23日付で『The Lancet Public Health』誌に発表された論文は、この常識を覆しました。
オーストラリア・シドニー大学(The University of Sydney)のこの研究では、過去10年間の57の前向き研究を系統的にレビューし、日々の歩数と健康との関係を精密に解析しました。

その結果、「1日7000歩」でも死亡率や心疾患、認知症、うつ症状のリスクを大幅に低下させることが明らかになったのです。

目次

  • 「1万歩でなくてもいい」1日7000歩で死亡リスクが47%低下すると判明
  • 新指標「1日7000歩」をどうやって日常生活で達成できる?

「1万歩でなくてもいい」1日7000歩で死亡リスクが47%低下すると判明

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「1日1万歩」の目標は決して悪いわけではないが、なかなか大変 / Credit:Canva

1日1万歩」という数値は、語呂の良さやキリの良さで定着し、様々な場面で掲げらられるようになりました。

フィットネス業界や歩数計メーカーが「健康のために1日1万歩を目指しましょう」と勧めることも少なくありませんでした。

ところが、その後ウェアラブルデバイス(スマートウォッチなど)の普及により、歩数と健康状態の関係が“客観的に”計測できるようになりました。

今回の研究では、2014年から2025年までに10カ国以上で実施された57の前向き研究を対象に、日常の歩数と疾患発生リスクの関係をメタアナリシス(統合解析)によって精査しました。

研究チームはまず1日2000歩の県境への影響を調べ、その後1000歩ずつ増やしていきました。

解析の結果、1日あたり7000歩を歩くことで、2000歩と比較して全死亡リスク(健康に関連)が47%も低下することが明らかになりました。

これは1万歩歩く場合とほぼ同じ数値です。

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7000歩でも全死亡リスクは大幅に低下する / Credit:Canva

さらに、7000歩と2000歩を比較すると、心疾患の発症リスクは25%、関連する死亡リスクも47%減少していました。

がんの発症リスクに関しては有意な減少は見られませんでしたが、がんによる死亡リスクは37%低下しており、明確な効果が示されました。

また、認知症については7000歩で38%のリスク低下が確認され、それ以上歩数を増やしても効果の伸びは緩やかであるとされています。

加えて、うつ症状の発生率は22%低下し、転倒リスクも28%減少していました。

研究チームは「少ない歩数でも、増やせば増やすほど健康効果がある」と指摘しています。

たとえば、過去のメタアナリシスでも1日4000歩で健康効果が得られることが報告されており、7000歩はその上で「現実的で到達可能な、最大効率のスイートスポット」と位置づけられました。

また、年齢別にみると、高齢者ではより少ない歩数でも効果が現れやすい可能性があり、個々の体力や健康状態に応じた目標設定が求められます。

副著者であるキャサリン・オーウェン氏は「すでにアクティブな人にとって1万歩は良い目標だが、多くの人にとっては7000歩でも十分すぎる成果が得られる」とコメントしています。

では、7000歩という新たな指標を私たちの生活にどのように当てはめられるでしょうか。

新指標「1日7000歩」をどうやって日常生活で達成できる?

「1日7000歩」という新たな指標は、私たちの日常にどのように取り入れれば良いのでしょうか?

まず、7000歩というのはざっくり言えば、約5km、時間にして60分程度の軽いウォーキングに相当します。

しかしそれを「一度にやらなければならない」わけではありません。

通勤の一部を徒歩に変えたり、昼休みに15分歩いたり、階段を使うなど、小さな“歩き”の積み重ねでもOKです。

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1度に7000歩達成するのではなく、通勤などを上手に利用しよう / Credit:Canva

例えば、オフィスへの行き帰りで合計30分、帰宅後に30分のウォーキングであれば、大きな負担ではないでしょう。

また、歩数が増えるほど恩恵は大きくなるが、無理に1万歩を目指さなくてもいいという“非線形の関係”も注目です。

つまり、「5000歩→7000歩」への増加は大きな効果をもたらす一方で、「7000歩→1万歩」はそこまで劇的な違いを生まないのです。

この事実は、特に高齢者や運動に不慣れな人々にとって心強い指針になるでしょう。

共同著者のディン・ディン氏は「完璧さを追求するのではなく、小さな前進に注目すべき」と語り、「少しでも歩く習慣があれば、それだけで有意義な健康効果が得られる」と述べています。

今回の研究は、「高すぎる目標よりも持続可能な行動こそが健康をつくる」というメッセージを私たちに伝えています。

1日1万歩に疲れて挫折していた人も、これからは“7000歩でいい”という新常識を武器に、無理なく健康づくりを始めてみてはいかがでしょうか?

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参考文献

Reduced step-count sweet spot cuts risk of early death by nearly half
https://newatlas.com/fitness/step-count-death/

Rethink the 10,000 a day step goal, study suggests
https://www.sydney.edu.au/news-opinion/news/2025/07/24/rethink-the-10000-a-day-step-goal-study-suggests.html

元論文

Daily steps and health outcomes in adults: a systematic review and dose-response meta-analysis
https://doi.org/10.1016/S2468-2667(25)00164-1

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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