カンガルーと同じ袋を持つ動物といえば「有袋類」ですが、そんな有袋類にはウサギのような長い「うさ耳」を持つ種「ミミナガバンディクート」が存在します。
かつてオーストラリア大陸のおよそ七割の地域で駆け回っていたミミナガバンディクートですが、今その数を減らし、は絶滅の危機に瀕しています。
しかし嬉しいことに、オーストラリア野生生物保護協会(AWC)の再導入プログラムによって、ミミナガバンディクートが約3,330匹にまで増えたと報告されました。
目次
- 「うさ耳」をもつ有袋類「ミミナガバンディクート」とは?絶滅の危機に瀕している
- 保護区のミミナガバンディクートが復活!
「うさ耳」をもつ有袋類「ミミナガバンディクート」とは?絶滅の危機に瀕している

ミミナガバンディクート(学名:Macrotis lagotis )は、哺乳綱バンディクート目ミミナガバンディクート科に属するオーストラリア固有の有袋類です。
「ビルビ」や「フクロウサギ」と呼ばれることもあります。
体長は約30~55cm、体重は1~2.5kgで、ウサギのように長い耳(約10~15cm)とネズミに似た長い尾を持ち、夜行性に活動します。
昼間は暑さと捕食者を避けるため、土中に約1.5~2mの巣穴を掘って過ごします。
この巣穴があることで、土壌の通気性が良くなり、雨水が地中にしみ込みやすくなります。
さらに、種子の埋没や発芽を助け、他の小さな動物たちにもシェルターを提供します。
年間に掘り返す土量は約20トンとさえ言われており、砂漠の土壌を改良し、環境を支える大切な役割を果たしてきました。

しかし、オーストラリア野生生物保護協会(AWC)に所属する生態学者ジェニファー・アンソン氏によると、「ミミナガバンディクートはかつてオーストラリアの約4分の3に生息していましが、今では分布域の80%から姿を消しました」とのこと。
ネコやキツネといった野生化した捕食動物が主な原因と考えられており、そこに生息地の劣化や火災による環境の変化が重なり、ミミナガバンディクートは次々と数を減らしてしまいました。
住む場所も限定され、このユニークで可愛らしい動物は、絶滅危惧種へと追い込まれたのです。
そこで20世紀後半、ミミナガバンディクートを救うため、AWCは大きなフェンスで囲った保護区を複数設置しました。
では、どんな結果になったでしょうか。
保護区のミミナガバンディクートが復活!

AWCは最近、ミミナガバンディクートが、オーストラリアの一部の地域で復活していることを報告しました。
保護区内の個体数が急増し、約3,330匹にまで増加したのです。
現在、6か所の保護区のうち4か所は過去10年以内に新設された地域で、個体数の増減が見られます
若い親子の姿も多く見られるようになり、健全な世代交代が順調に進んでいることが分かります。
保護区が捕食者たちからミミナガバンディクートを効果的に守ってきたことがよく分かります。

それでも、ある保護区では2023年2月時点で約1,770匹いた群れが、2024年11月時点で約986匹にまで減少しました。
これはこれらの期間で生じた干ばつが原因です。
土地の乾燥や食料資源の不足により、保護区内のミミナガバンディクートたちにも影響が出たのです。
しかし、AWCの研究者は「厳しい環境は種の適応力を試すための試練であり、保護区内なら再び回復が期待できる」と述べています。
アンソン氏も、「ビルビーのゲノムは様々な環境の選択圧にさらされ、気候の変化に対する耐性が少しずつ高まります」と述べており、こうした試練を通して、適応能力が高まっていくことが期待されています。
今後も研究者たちによるサポートは行われていきます。
「うさ耳」をもつ夜行性の小さな穴掘り名人たちが、再び広い土地を自由に動き回る未来を目指して、彼らの取り組みは続くのです。
参考文献
Bilbies have their eggs in more than 1 basket this Easter
https://cosmosmagazine.com/nature/animals/bilby-populations-boom-awc/
Greater Bilby
https://www.australianwildlife.org/animals/greater-bilby
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部