朝食抜き・遅い夕食で「骨折リスクが高まる」と判明

ビタミン

「朝はバタバタしていて、つい朝食を抜いてしまう」

「残業や付き合いで夕食は遅くなりがち」

そんな現代人のライフスタイルが、思わぬ健康リスクとつながっているかもしれません。

これまで骨粗鬆症(こつそしょうしょう)による骨折リスクは、運動不足や喫煙、飲酒といった生活習慣病との関連がよく知られてきました。

しかし、奈良県立医科大学の最新研究で、「朝食抜き」や「遅い夕食」という食習慣も骨折リスクの上昇と関係していることが初めて明らかになったのです。

研究の詳細は2025年8月28日付で科学雑誌『Journal of the Endocrine Society』に掲載されています。

目次

  • 骨折リスクと食習慣、その知られざる関係
  • 1100万人の調査で分かった「骨折リスク」と食習慣

骨折リスクと食習慣、その知られざる関係

画像
Credit: canva

私たちの骨は年齢とともに弱くなり、特に高齢者では「骨粗鬆症」と呼ばれる病気によって骨折のリスクが高まります。

一度骨折すると、寝たきりになったり、介護が必要になったりと、生活の質が大きく低下してしまうため、骨粗鬆症の予防は高齢化社会の日本にとって重要なテーマです。

これまで骨折リスクに関連すると考えられてきたのは、「運動不足」「喫煙」「飲酒」など、いわゆる不健康な生活習慣です。

また、カルシウムやビタミンDの摂取不足が骨密度を下げることも広く知られています。

しかし「朝食を抜く」「夕食が遅くなる」といった食習慣自体が、骨折リスクにどう関係しているかは、これまで十分に調べられてきませんでした。

「朝食抜き」が骨密度の低下と関係しているのでは、という指摘はあったものの、実際に骨折リスクがどれほど上昇するのかは未解明。

また、「遅い夕食」にいたっては骨の健康への影響を調べた研究が存在しなかったのです。

一方で、現代社会では働き方や生活リズムの変化から、朝食を食べる時間が取れない人や、帰宅が遅く夕食のタイミングが夜遅くになる人が増えています

こうした“食習慣の乱れ”が、見過ごされがちな健康リスクをはらんでいるかもしれない。

この素朴な疑問から、奈良県立医科大学の研究グループは前例のない大規模データ解析に挑みました。

1100万人の調査で分かった「骨折リスク」と食習慣

研究チームは、日本全国の健康診断データと医療のレセプト(診療明細)を連結した「DeSCデータベース」に着目。

このデータベースには2014〜2022年に健康診断を受けた20歳以上、しかも過去に骨粗鬆症と診断されたことがない約1,100万人分ものデータが含まれています。

研究では、健康診断時の問診票から「朝食抜き(週3回以上朝食を抜く)」「遅い夕食(週3回以上、就寝2時間以内に夕食)」という食習慣をピックアップ。

これらの食習慣と、実際に骨折が発生したかどうかのデータをつなぎあわせ、他のリスク要因(年齢や性別、喫煙や運動習慣、持病など)を調整したうえで骨折リスクを算出。

その結果、解析対象となった約92万人のうち、約2万8千人が骨粗鬆症性骨折を発症していたことが分かりました。

そして朝食を抜く習慣がある人は、そうでない人と比べて骨折リスクが18%も高いということが判明。

さらに「遅い夕食」も、骨折リスクを8%上昇させることが示されました。

この2つの食習慣を両方持っている人では、骨折リスクは23%増加し、複数の要因が重なることで相加的に影響が強まることも明らかになったのです。

画像
Credit: canva

また、喫煙や運動不足、睡眠の質が悪い人も骨折リスクが高いという従来の知見も再確認されています。

特に「朝食抜き」の人は、喫煙や運動不足、体重増加など、ほかの不健康な生活習慣も重なっている傾向がありました。

このことから、朝食を抜く・遅い時間の夕食といった食習慣の乱れだけでなく、その背景にある生活スタイル全体に目を向けることが大切だと、チームは指摘しています。

たとえば仕事や家庭の事情で食事時間が不規則になりやすい人は、知らず知らずのうちに骨の健康リスクを高めてしまっている可能性があるのです。

「骨折しやすいのは高齢の方で、自分にはまだ関係ない」と思っている方も多いかもしれません。

しかし、骨の健康は若いうちから積み重ねていくもの。

毎日の朝食をきちんと食べることや、夕食の時間を意識するだけで、将来の骨折リスクを減らせる可能性があります。

全ての画像を見る

参考文献

朝食抜き・遅い夕食の習慣は骨折リスクを高める可能性がある ー1100万人のデータ解析で食習慣との関連を初めて明らかにー
https://www.naramed-u.ac.jp/university/kenkyu-sangakukan/oshirase/r7nendo/fracturerisk.html

元論文

Dietary Habits and Osteoporotic Fracture Risk: Retrospective Cohort Study Using Large-Scale Claims Data
https://doi.org/10.1210/jendso/bvaf127

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

タイトルとURLをコピーしました