「男の自信は、見た目だけじゃない」
こうした物言いはよく耳にします。
しかし実際には、多くの男性が自分の身体的特徴、特に「性器のサイズ」について密かに気にしています。
ネット上やSNSでは「理想のサイズ」や「平均値」といった情報が飛び交い、ときに不安やコンプレックスの原因にもなっています。
では、「性器の大きさ」は生まれつき決まっているのでしょうか? それとも、後天的な要因も影響するのでしょうか?
この素朴でありながらセンシティブな疑問に、思わぬ形で新しい答えを提示したのが、ベトナム・ハノイ医科大学病院(HMU)による最新研究です。
研究チームによれば、「小児期(10歳頃)に肥満だった男性は、成人後の陰茎がやや短くなる傾向にある」ことが明らかになりました。
体重管理は、幼少期にも注意が必要かもしれません。
研究の詳細は2025年8月2日付で科学雑誌『Journal of Sexual Medicine』に掲載されています。
目次
- 子供時代の肥満と成人後の「性器の短さ」の関係
- 予防は「子供時代」から
子供時代の肥満と成人後の「性器の短さ」の関係
今回の調査は、2023年6月から2024年7月にかけて、ハノイ医科大学病院の男性科で生殖健康チェックを受けた、異性愛男性290人を対象に実施されました。
研究チームは、参加者それぞれに10歳時点の体型(BMI)を、幼少期の写真や記憶をもとに3Dモデルで再現し、小児期の「肥満」「標準」「やせ型」といった分類を行いました。
そして成人後の身長、ウエスト・ヒップ周囲径、両手の指の長さ、そして陰茎の長さ(弛緩時・牽引時※)や直径を詳細に測定。
(※ 弛緩時とは勃起していない通常状態のことで、牽引時は勃起していないものの、弛緩した性器をまっすぐに引っ張って伸ばしたときの長さ)
その結果、成人後のBMI(現在の体型)ではなく、「小児期の肥満状態」と「成人後の陰茎の長さ」には明確な関連があることが判明しました。
たとえば、
・小児期に肥満だった男性は、そうでなかった男性に比べて、弛緩時の長さが約1.9cm、牽引時の長さが約1.2cm短い傾向が認められました。
・一方で、成人後のBMIや肥満度と陰茎サイズには明確な相関はなく、ウエストやヒップの周囲径に弱い関連がある程度でした。
チームによれば、陰茎の発育は主に思春期の男性ホルモン(テストステロン)の働きによって進みます。
しかし小児期の肥満は、ホルモンバランスに影響を与え、テストステロンの分泌を抑制してしまうことが過去の研究で知られています。
その結果、性器の発育にも“見えないブレーキ”がかかる可能性があるのです。
また研究の対象者は「生殖医療の相談に来た男性」ではありますが、測定値そのものは一般集団と大きく乖離(かいり)しているわけではありません。
つまり、“将来の長さ”を左右する要素として、「子供時代の体型」は無視できないリスクファクターだと言えるのです。
予防は「子供時代」から
この研究は一見すると「大人の性」の話題ですが、真のメッセージはむしろ“予防”の重要性にあります。
これまで多くの男性が、自分の陰茎の大きさを気にしてきました。
しかし実際には、平均的な長さの範囲内であれば、日常生活や健康面で深刻な問題が生じることはほとんどありません。
極端に小さい場合(マイクロペニスなどの医学的状態)は例外ですが、多くの人は不安を感じる必要はないのです。
しかし「小児期の肥満が将来的な陰茎の長さに影響を与える」という新たな事実は、男性自身だけでなく、保護者や医療関係者にとっても重要な警告を投げかけます。
チームは「小児期の肥満は、成人後の体型だけでなく性器の発育にも長期的な影響を与える可能性がある。だからこそ、早期の肥満予防や生活習慣の改善が極めて重要」と結論づけています。
一般的には「大人になってから痩せればいい」と考えがちですが、実は子供時代の体型が、将来の性器の長さに影響してくるのかもしれません。
参考文献
Men who were obese as children tend to have shorter penises
https://www.psypost.org/men-who-were-obese-as-children-tend-to-have-shorter-penises/
元論文
Associations between obesity across the lifespan and adult penis dimensions: a retrospective observational study of Vietnamese men using 3D-modeled prepubertal BMI
https://doi.org/10.1093/jsxmed/qdaf184
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

