年齢によって「自慰行為の頻度」はどう変わるか、調査した結果

「人は年齢を重ねると、自慰行為の頻度はどう変化するのか?」

こんな疑問を抱いたことはありませんか。

思春期にめざめ、恋人ができ、結婚し、家庭を持つ。

人生のさまざまな節目のなかで、人の性行動はどのように変化していくのでしょうか。

この問いに、20年以上にわたり同じ人々を追跡したノルウェー・オスロ大学(University of Oslo)の大規模縦断研究が、これまで誰も知り得なかった「自慰行為の頻度変化」を明らかにしました。

研究の詳細は2025年4月29日付で科学雑誌『The Journal of Sex Research』に掲載されています。

目次

  • 年齢による「自慰行為の頻度」のリアルな変化とは
  • 「パートナーの有無」「親になる」「性的指向」が与える影響

年齢による「自慰行為の頻度」のリアルな変化とは

今回紹介するのは、ノルウェーで1970年代に生まれた若者たちを十代から中年期まで追い続けた大規模プロジェクト「Young in Norway」研究です。

研究チームは、19歳から最大で50代後半まで、合計2562名の参加者から3回にわたってアンケートデータを収集しました。

この調査では、

・どのくらいの頻度で自慰行為をしているか

・パートナーとの性交渉の頻度

・性的な空想の頻度

・パートナーの有無や子どもの有無

・性的アイデンティティや学歴、宗教的背景

など、多様な項目を定期的に尋ねています。

膨大なデータを解析した結果、まず男女で明確な違いが浮かび上がりました。

女性の変化:「30代前半」でピーク、その後は緩やかに減少

女性の場合、19歳から30代前半までは年齢とともにマスターベーションの頻度がじわじわ増えていき、31歳ごろにピークを迎えました。

しかし、その後は徐々に頻度が減少していく傾向が見られたのです。

「30歳をすぎると、性的な自己表現や興味がやや落ち着いていく」

そんな傾向がうかがえますが、背景には仕事や育児、パートナーシップなど、人生のステージの変化が影響している可能性も考えられます。

男性の変化:「ずっと安定」、でも内側では波も

男性の場合はまったく違うパターンです。

19歳から50歳まで、マスターベーションの頻度はほぼ横ばい。全年齢で女性よりも頻度が高いという結果も改めて示されました。

ただし、性的な空想の頻度やパートナーの有無といった要素を加味して詳細に分析すると、男性の傾向にも細かな波がありました。

たとえば、性的な空想が少ないときほど、20代から30代半ばにかけて頻度がやや下がり、その後また増加するパターンも見えてきたのです。

「男性の自慰行為は安定しているようで、実は内面の状況や人生イベントに揺れ動いている」ことが、精密な分析から明らかになりました。

「パートナーの有無」「親になる」「性的指向」が与える影響

マスターベーションは単なる「性の代替行為」なのか、それとも独立した行動なのでしょうか。

チームはパートナーとの性交渉の頻度を調整して分析しましたが、自慰行為の年齢変化パターンはほとんど変わりませんでした。

この結果は「自慰行為は“パートナーがいないから仕方なくやるもの”ではなく、自律的な性行動として存在している」ことを裏付けています。

ライフイベントによる変化:親になると「減る」傾向

さらに、子どもの有無も分析しました。

親になった人は、なっていない人に比べて、年齢が上がるにつれてマスターベーションの頻度がより早く減少する傾向が見られました。

子どもがいない人は、30歳前後まで頻度が増加し、その後一気に減少。

親になったことが、性の自己表現や時間の使い方に大きく影響を与えていることが示唆されます。

セクシュアリティ・宗教・学歴との関係

性的指向の面では、異性愛者以外(同性愛・両性愛など)の人は、全年齢でより頻繁に自慰行為を行っている傾向がありました。

ただし、年齢ごとの変化パターン自体は異性愛者とほぼ同じでした。

宗教的な背景については、女性では19歳時点で宗教を持つ人の頻度がやや低い傾向があったものの、長期的には影響は見られませんでした。

男性では宗教や学歴による大きな差は観察されていません。

今回の研究から見えてきたのは、「マスターベーションの頻度」は単純に“若いほど多い、年をとると減る”というものではないということです。

人生のさまざまなステージや心の動き、家庭や社会との関わりによって、性の自己表現は揺れ動き続けています。

また「パートナーの有無」に関係なく、自律的な性行動としての自慰行為が多くの人にとって重要な役割を持っていることも、科学的に裏付けられました。

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参考文献

New longitudinal study reveals how masturbation habits evolve from young adulthood to midlife
https://www.psypost.org/new-longitudinal-study-reveals-how-masturbation-habits-evolve-from-young-adulthood-to-midlife/

元論文

Masturbation Trajectories from Late Adolescence into Mid-Adulthood: A Population-Based Longitudinal Study
https://doi.org/10.1080/00224499.2025.2489091

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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