小惑星リュウグウから「太陽系最古の岩石」を発見、約45億6730万年前

NASA

日本JAXA(宇宙航空研究開発機構)の小惑星探査プロジェクト「はやぶさ2」が目標とする小惑星「リュウグウ」。

このほど、リュウグウから採取されたサンプル中に「太陽系最古の岩石が発見された」と北海道大学らの研究チームが報じました。

その年代は約45億6730万年前

今回の発見は、小惑星リュウグウが太陽系の遠方領域で誕生したことを示唆しています。

研究の詳細は2025年7月16日付で科学雑誌『Communications Earth & Environment』に掲載されました。

目次

  • リュウグウはいつ誕生したのか?
  • リュウグウから「太陽系最古の岩石」を検出

リュウグウはいつ誕生したのか?

小惑星リュウグウは、JAXAの探査機「はやぶさ2」によって地球にサンプルが持ち帰られたことで注目を集めました。

そのサンプルには約40℃の低温の水溶液から生成された鉱物が多く含まれており、かつてリュウグウ内部に水が存在していたことを物語っています。

その生成年代はは約45億6200万年前と推定されていました。

しかし、これらの主要な鉱物はすべて“二次的”にできたものであり、「リュウグウ」を作った最初期の原材料物質そのものが「いつ」形成されたのかは、これまで明らかになっていませんでした。

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はやぶさ2から撮影された自転するリュウグウ/ Credit: ja.wikipedia

その謎を解く鍵を握るのが、「CAI(カルシウム・アルミニウムに富む包有物)」と呼ばれる鉱物です。

これは太陽系誕生直後の高温(1000℃以上)の領域で最初に結晶化した固体物質で、隕石中に含まれていることも知られています。

ところが、リュウグウや同型の隕石では、このCAIが非常に小さく(直径0.01~0.02mm)、しかも非常に稀にしか見つかりません。

そのため、リュウグウの成り立ちや、どの領域で誕生したのかを確かめるのは長らく困難でした。

リュウグウから「太陽系最古の岩石」を検出

今回の研究で、北海道大学のチームはリュウグウのサンプル(C0006粒子)から「RC06」と名付けたCAIを発見。

このCAIには、ヒボナイトとスピネルという高温鉱物が含まれており、酸素同位体の組成が太陽系初期の物質に一致することが分かりました。

そして最も注目すべき成果は、このCAIに含まれるアルミニウムとマグネシウムの放射壊変(26Al–26Mg年代測定法)を用いて、形成された時期をピンポイントで特定したことです。

その結果、リュウグウ由来のRC06は、太陽系の誕生直後である約45億6730万年前に形成されていたことが判明しました。

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小惑星「リュウグウ」から見つかった太陽系最古の岩石「CAI」/ Credit: 北海道大学(2025)

これはリュウグウが太陽系でもっとも初期に形成された岩石のひとつであることを意味します。

さらに重要なのは、リュウグウには大型のCAI(サブミリサイズ以上)が存在せず、小型のものしか見つからない点です。

これはリュウグウが太陽系の遠方(原始木星による圧力バンプの外側)で形成されたことを示唆していると研究者は説明します。

大型の粒子はガスとの摩擦で太陽に向かって流されてしまう一方、小さな粒子だけが遠方にとどまることができたと考えられているのです。

今回の研究は、リュウグウがどこで、どのように生まれたのかという謎に対して、科学的な証拠を初めて示した画期的な成果です。

チームは今後、NASA(アメリカ航空宇宙局)が回収した小惑星「ベヌー」のサンプルとの比較解析も進める予定とのこと。

それにより、太陽系初期の物質の分布や、惑星がどのように誕生したかという壮大な謎にさらに迫ることができるでしょう。

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参考文献

小惑星リュウグウから太陽系最古の岩石を発見~リュウグウは太陽系遠方で形成された特異な天体であることを示唆~
https://www.hokudai.ac.jp/news/2025/07/post-1973.html

元論文

Solar System’s earliest solids as tracers of the accretion region of Ryugu and Ivuna-type carbonaceous chondrites
https://doi.org/10.1038/s43247-025-02511-x

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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