内容量をひそかに減らす「ステルス値上げ」が原因で”あるレシピ”が崩壊する

各家庭には、それぞれ定番の料理やお菓子があります。

特に簡単なレシピは、親から子へ、さらに孫へと、何世代にもわたって受け継がれてきました。

しかし近年、アメリカで使われてきたケーキミックスの中身が減ったことで、こうした“親子代々伝わるレシピ”が崩壊しています。

内容量をひそかに減らす「ステルス値上げ(シュリンクフレーション)」が、家庭の味にまで思わぬ影響を及ぼしているのです。

目次

  • ステルス値上げで「ケーキミックスの箱が軽くなっている」
  • ステルス値上げで「親子代々伝わるレシピ」が崩壊する理由

ステルス値上げで「ケーキミックスの箱が軽くなっている」

アメリカで長く親しまれている「ベティ・クロッカー(Betty Crocker)」のケーキミックスは、「親子で簡単に作れるお菓子」の材料として多くの家庭に浸透してきました。

ケーキミックスとは、小麦粉や砂糖、ベーキングパウダーなどが一つにまとまっている便利な粉のセットです。

これに卵や水、油などを加えるだけで、本格的なケーキやクッキーが作れるため、世代を超えて人気があります。

でも最近、このケーキミックスの中身がどんどん減っていることが話題になっています。

例えば、以前は1箱18.25オンス(約517グラム)入っていたのが、数年前には15.25オンス(約432グラム)に、さらに2023年には13.25オンス(約375グラム)にまで減っています。

最初から比べると27%も減ったのです。

こうした「中身を減らす」やり方は、「シュリンクフレーション」と呼ばれています。

シュリンクフレーションとは、商品の内容量を減らして値段はそのまま。実質的に“見えない値上げ”をすることです。

アメリカだけでなく、日本でもお菓子やアイスクリームなどで同じ現象が広がっており、「ステルス値上げ」などと呼ばれることもあります。

メーカーは、原材料や輸送のコストが上がっても、値上げを目立たせずに利益を守るため、こうした方法を選ぶことが多くなっているようです。

そして、こうしたステルス値上げによって、親子代々受け継がれてきた「いつもの味」や「思い出のレシピ」がうまく再現できなくなる、という予想外の問題が生まれています。

ステルス値上げで「親子代々伝わるレシピ」が崩壊する理由

なぜ、ケーキミックスの内容量が減ると、“親子代々伝わるレシピ”が作れなくなってしまうのでしょうか。

その理由は、そうしたレシピが子供でも覚えやすい簡単なものであり、さらにお菓子作りにとって「分量」がとても大切だからです。

たとえば、ある家庭では「ベティ・クロッカーのケーキミックス1箱・卵2個・油1/3カップ」でクッキーを作るレシピが、何十年も受け継がれてきました。

ところがミックスの中身が減ってしまうと、生地がゆるくなったり、焼き上がりがべちゃっとしたものになったりします。

かつてはこの簡単なレシピで軽くてふわふわのクッキーが24枚作れましたが、今ではドロドロの塊が20個しかできないのです。

実際、長年同じレシピで作ってきた人たちからは「新しいミックスで作ったら別物になってしまった」と困惑する声が広がっています。

さらに最近は、中身の量だけでなく、ケーキミックスに含まれる膨張剤などの成分自体が変わっている可能性も指摘されています。

あるユーザーは「焼きたては大きく膨らんでいても、冷めるとすぐにしぼんでしまう」とSNSで語っているのです。

しかもこの影響は、パンケーキや焼き菓子など、さまざまな家庭のお菓子や料理にも広がっています。

では、どうすれば伝統の味や思い出のレシピを守ることができるのでしょうか?

一つの方法は、ケーキミックスなどの既製品に頼りすぎず、小麦粉や砂糖、ベーキングパウダーなど基本の材料からレシピを作り直すことです。

また、今使っている商品の内容量や成分をきちんと記録しておき、もし変化があったときに自分で調整できるようにするのも有効です。

「親子代々伝わるレシピ」は、単なる思い出だけでなく、社会全体の食文化でもあります。

これからも進みそうな「ステルス値上げ」の時代を乗り越えるには、家庭ごとに工夫しながら「自分たちの味」を守ることが大切です。

あなたの家の“受け継がれてきた味”は大丈夫でしょうか?

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参考文献

The 70-Year-Old Beloved Boxed Mix Grandmas Won’t Be Buying This Holiday Season
https://www.thekitchn.com/grandmas-arent-buying-boxed-cake-mix-23687784

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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