レズビアンのカップルは「破局リスク」が最も高いと判明

フィンランド

日本ではまだ同性婚が法律的に認められていませんが、世界では顕著に増加しつつあります。

多様な愛のかたちが広がりつつある今、「同性カップルの関係はどれくらい安定しているのか?」という疑問は、多くの人が考えたことがあるかもしれません。

そんな中、フィンランド・ヘルシンキ大学(UH)の最新研究で、レズビアン(女性同士)のカップルは、ゲイ(男性同士)や異性愛カップルと比べて「破局(離婚)リスク」が最も高いことが明らかになりました。

この結果は、パートナーシップの持続や支援のあり方を考えるうえで、多くの示唆を与えてくれます。

研究の詳細は2025年9月9日付で学術誌『Journal of Marriage and Family』に掲載されました。

目次

  • レズビアンカップルはもっとも破局しやすい?
  • なぜ破局に陥りやすいのか?

レズビアンカップルはもっとも破局しやすい?

この研究は、フィンランドで2003年から2020年までに法的な婚姻やパートナーシップを結んだカップル、合計45万組超を対象としたものです。

そのうち、約5300組が同性カップルで、女性同士(レズビアン)のカップルが全体の3分の2を占めていました。

調査では「結婚前にどれくらい同居していたか」「過去の関係で子どもがいたか」「現在のパートナーとの間に子どもがいるか」といった詳細なライフイベントをもとに、関係がどのように変化しやすいかを分析。

まず注目すべきは、10年間で離婚に至った割合です。

女性同士のカップルでは約41%が10年以内に関係を解消していました。

これは男性同士のカップル(27%)、異性愛カップル(22%)と比べても、明らかに高い数値です。

さらに年齢や学歴、国籍などの影響を統計的に調整しても、女性カップルの破局リスクは異性愛カップルの2倍以上、男性カップルより約20%も高いままでした。

では、なぜ女性同士のカップルは破局しやすいのでしょうか?

なぜ破局に陥りやすいのか?

過去の一部の研究では「女性同士のカップルは親密な関係を早く築きやすく、出会ってすぐに同居や結婚に踏み切る傾向が強い」というイメージが語られてきました。

しかし、実際にデータを検証してみると、確かに女性カップルは他より結婚前の同居期間が短い傾向はありましたが、この違いだけで高い破局リスクの大半は説明できませんでした。

また、過去の関係で子どもがいた場合、すべてのカップルタイプで破局リスクは高まる傾向が見られましたが、その影響は女性同士のカップルで特に強いわけではありませんでした。

このように、「女性同士カップルはすぐに親密になりすぎてしまうから破局しやすい」「子どもがいるから離婚が増える」といった単純な説明では、現実を語りきれません。

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Credit: canva

一般的には、関係を安定させる「守り神」として期待されるのが「二人の間に子どもがいること」です。

実際、異性愛カップルでは、子どもがいることで離婚率が下がるという効果がよく知られています。

一方、同性カップル、とくに女性同士のカップルでは、この「守り神」の効力が期待どおりには働きませんでした。

今回の研究では、女性同士のカップルが医療的な支援などを経て親になるケースが多いことから、「子どもを持つことで絆がさらに強まるのでは」と予想されていました。

ところが実際には、二人の間に子どもがいても、異性愛カップルほど破局リスクを下げる効果はみられなかったのです。

これは「家庭を持てば関係は安定する」という常識が、すべてのカップルに当てはまるわけではないことを示しています。

さらにチームが同居期間・過去の子ども・現在の子どもという3つの要素をすべて調整した場合でも、女性カップルの離婚リスクは他のカップルより依然として高いままでした。

3要素をすべて考慮しても、この差の2~3割ほどしか説明できなかったのです。

この結果は、家族や結婚をめぐる社会的背景や、当事者の価値観やコミットメント、パートナーシップの質といった「見えない要素」が大きく影響していることを示唆しています。

今回の研究は、レズビアンカップルがとくに破局しやすいという事実だけでなく、「なぜそうなるのか」という問いの複雑さを浮き彫りにしました。

人間関係の安定には、見えるデータだけでなく、社会の価値観や法律、個々人の心理的な要素が複雑に絡み合っているようです。

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参考文献

Why lesbian couples face a higher divorce risk: New study explores the mystery
https://www.psypost.org/why-lesbian-couples-face-a-higher-divorce-risk-new-study-explores-the-mystery/

元論文

Same-Sex and Different-Sex Couples’ Divorce Risks: The Role of Cohabitation and Childbearing
https://doi.org/10.1111/jomf.70027

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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