クジラに吸着する「コバンザメ目線」の貴重映像を撮影

クジラ

大海原を悠々と泳ぐザトウクジラ。

その体にまるで遊園地のジェットコースターのごとく張り付く小さな魚たちが、コバンザメです。

そしてこのほど、「クジラに吸着するコバンザメ」の目線で、その驚きの生態が世界で初めて“動画”として記録されました。

私たちが想像もしない海の旅路、クジラとコバンザメが織りなす“便乗ライフ”に、最新科学が迫ります。

目次

  • クジラに便乗するコバンザメ
  • コバンザメ目線の映像の撮影に成功!

クジラに便乗するコバンザメ

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コバンザメの頭上の小判型の吸盤/ Credit: ja.wikipedia

コバンザメは、オーストラリア東海岸を回遊するザトウクジラたちに吸着し、まるで巨大なクルーズ船に乗る旅人のように生涯を過ごします。

この小さな魚は、頭部にある吸盤状の構造でクジラの皮膚にピタリと張り付き、時速何十キロにもなるクジラのスピードにもへっちゃらです。

なぜコバンザメはここまでしてクジラにしがみつくのでしょうか?

その理由は、エネルギーの節約天敵からの保護、そして何より「クジラの体表に棲みつくシラミや寄生生物」「はがれ落ちる皮膚のかけら」という豊富な食料にあります。

研究によれば、コバンザメが特に多くついているのは、皮膚のはがれやすい個体で、その数は1頭あたり15〜20匹、多いときは50匹にもなるそうです。

コバンザメはクジラの“掃除屋”として、皮膚の健康維持にも貢献しますが、どうやらクジラ側はその“しつこい同乗者”を快く思っていない節もあるようです。

クジラがジャンプを繰り返し、コバンザメを振り落とそうとする姿が度々観察されています。

コバンザメはクジラ以外にも、サメ、マンタ、ウミガメ、ジュゴン、そして時には船やダイバーにまで吸着します。

彼らの驚くべきライフサイクルもまた、クジラと切り離せない関係にあることが分かってきました。

コバンザメ目線の映像の撮影に成功!

豪グリフィス大学(Griffith University)の研究チームは、ザトウクジラの体に吸盤カメラを取り付け、コバンザメたちの行動を初めて“クジラ目線”で撮影することに成功しました。

その映像には、クジラが水面を割ってジャンプする直前、コバンザメの群れがギリギリまで体にしがみつき、ジャンプの瞬間だけ素早く離脱し、そして再び驚異的なスピードと正確さでクジラに戻る姿が記録されています。

実際の映像がこちら。音量に注意してご視聴ください。

まるでオリンピック体操選手のようなタイミングで、コバンザメは何度でもクジラの体へ“着地”します。

この巧みな動きは、コバンザメが常に“皮膚のはがれ”や“寄生虫”といった食料を逃さず確保するための戦略でもあります。

また、コバンザメは自ら移動して“ホスト”を変えることもありますが、その全容はまだ謎に包まれています。

こうした映像は、これまで断片的にしか知られていなかったクジラとコバンザメの共生関係に新たな光を当てました。

今後も「コバンザメ目線の映像」を手がかりに、クジラとコバンザメの知られざる関係が解き明かされていくことでしょう。

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参考文献

Rare footage shows sucker fish as they whale-surf in the ocean’s wildest joyride
https://phys.org/news/2025-11-rare-footage-sucker-fish-whale.html

All aboard the remora rollercoaster – camera tags capture wild humpback rides
https://news.griffith.edu.au/2025/11/05/all-aboard-the-remora-rollercoaster-camera-tags-capture-wild-humpback-rides/

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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