キムチは血糖値・中性脂肪値・高血圧に効果があると判明

今やスーパーでキムチを見かけないことはありません。

健康志向の高まりや韓流ブームの影響もあって、定期的にキムチを食べている人も多いのではないでしょうか。

ですが、「キムチは本当に健康に良いのか?」という疑問について、科学的にどこまで分かっているのでしょうか。

この問いに対して、アメリカのコネチカット大学(UConn)の研究チームが中心となって、世界中の主な学術データベースからキムチを対象にした最新の研究データをまとめて解析しました。

その結果、キムチを定期的に摂取することで、空腹時血糖値・血液中の中性脂肪値・高血圧といった生活習慣病リスクの改善が期待できるという、注目すべき知見が明らかになりました。

この研究成果は、2024年11月14日付の『Nutrition Reviews』誌に掲載されました。

目次

  • 「キムチの健康効果」とは?
  • キムチは血糖値や中性脂肪、高血圧に効果あり

「キムチの健康効果」とは?

キムチは韓国を代表する発酵食品で、白菜や大根、唐辛子、ニンニク、ショウガ、塩、魚介類などさまざまな材料を乳酸発酵させて作られます。

乳酸菌や食物繊維が豊富なことから、「腸活」や「免疫力アップ」に良い食品としても注目されています。

しかし、「キムチが体に良い」という話の多くは体験談や伝統的なイメージに基づくものが多く、本当に科学的な根拠があるのかどうかは、不明な点が多いのも事実です。

また、「塩分が高いキムチが、なぜ血圧や健康によいと言われるのか?」という疑問もあります。

日本でも「塩分の摂りすぎ=血圧が上がる」という認識が広がっており、キムチの健康効果を疑問視する声もあるのです。

そこで研究チームは、「発酵キムチの摂取が本当に心血管や代謝系の健康指標に良い影響を与えるのか?」を客観的に検証するため、世界の主要な医学・科学データベースを検索。

2011年~2023年に発表された発酵キムチのヒト介入試験(5件・205人)と大規模コホート研究(4件・42,455人)を厳選し、科学的に最も信頼性の高い「系統的レビュー+メタ分析」を実施しました。

分析の対象とした指標は、以下の通りです。

  • 空腹時血糖値(糖尿病リスク指標)
  • 血液中の中性脂肪値(トリグリセリド、TG。脂質異常症や動脈硬化のリスク指標)
  • 血圧(高血圧リスク指標)
  • 体格指数(BMIなど)
  • がんやメタボリックシンドロームの発症率

そして効果の大きさや信頼性は統計的な手法によって、数値として明確に評価されました。

キムチは血糖値や中性脂肪、高血圧に効果あり

解析の結果、発酵キムチを定期的に摂取することで、いくつかの重要な健康指標が有意に改善することが分かりました。

まず「空腹時血糖値」は、キムチ摂取群で平均1.93mg/dL低下しました。

これは血糖値が高めの人にとっても臨床的な意味がある改善です。

また、「血液中の中性脂肪値(トリグリセリド)」は、キムチ摂取群で平均28.9mg/dLの有意な低下が示されました。

同様に「収縮期血圧」は3.48mmHg低下、「拡張期血圧」は2.68mmHg低下が見られました。

研究チームの1人であるコネチカット大学の栄養学教授Ock Chun氏は、この結果に対して次のように述べています。

「臨床現場では、収縮期血圧が5mmHg下がるだけでも治療効果があったと考えられています。

薬を使わずに食事介入だけで3~4mmHg下がるのは、臨床的にも非常に有望な数字です」

さらに、メタ分析に含まれた前向きコホート研究では、キムチをよく食べる人ほど「がん」や「メタボリックシンドローム」の発症が少ない傾向も報告されています(この部分は因果関係ではなく、関連としての知見です)。

加えて、2024年に行われた韓国の大規模観察研究(40~69歳男女、約11万人)では、男性で白菜キムチ摂取と肥満の少なさ、また男女とも大根キムチの摂取と腹部脂肪の少なさとの関連が示されています。

では、なぜキムチを食べることでこのような効果が表れるのでしょうか。

一番のポイントは「キムチの複合的な作用」だと考えられます。

まず、キムチには塩分も多いですが、それ以上にカリウムが含まれています。

カリウムは体内の余分なナトリウム(塩分)を尿として排出する働きがあるため、この働きが効果的だった可能性があります。

また発酵による乳酸菌や善玉菌の作用も考慮できます。

発酵キムチは乳酸菌などのプロバイオティクス(善玉菌)が豊富です。

これが腸内環境を整え、腸からの脂質吸収や代謝を改善し、また体内のナトリウム排出も助けていると考えられます。

このように、今回の研究はキムチの健康効果に科学的根拠があることを明らかにした点で意義がありますが、注意も必要です。

たとえば、対象となった研究のほとんどが韓国人であり、日本や欧米、他の食文化や体質を持つ人々で同様の効果が得られるかは、まだはっきりしていません。

それでも、「キムチが血糖・脂質・血圧など現代人の生活習慣病リスクを下げる可能性が高い」という科学的エビデンスが示されたのは大きな前進です。

日々の食生活でキムチを取り入れることが、健康維持やメタボ・生活習慣病予防に役立つ可能性があり、今後のさらなる研究に期待が寄せられます。

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参考文献

Ancient dish a boon for blood pressure, cholesterol and glucose levels
https://newatlas.com/diet-nutrition/kimchi-blood-pressure-metabolic-health/

Why Kimchi Could Be Your Next Superfood
https://today.uconn.edu/2025/09/why-kimchi-could-be-your-next-superfood/

元論文

Effects of Fermented Kimchi Consumption on Anthropometric and Blood Cardiometabolic Indicators: A Systematic Review and Meta-Analysis of Intervention Studies and Prospective Cohort Studies
https://doi.org/10.1093/nutrit/nuae167

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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