エボラ出血熱が錠剤で治るかも!感染したサルの治療に成功!

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エボラ出血熱は、致死率が極めて高いウイルス感染症であり、これまで効果的な治療法を見つけることが困難とされてきました。

しかし、米テキサス大学の研究チームにより、新たな経口治療薬「オベルデシビル(Obeldesivir)」が、エボラウイルスに対して高い効果を示す可能性があると分かりました。

この薬によってエボラに感染したサルを治療することができたのです。

この研究は、2025年3月14日付の科学誌『Science Advances』に掲載されました。

目次

  • エボラ出血熱を治療する錠剤が登場する
  • 経口薬が人間に近い「サル」をエボラウイルスから救う

エボラ出血熱を治療する錠剤が登場する

エボラ出血熱は、エボラウイルスによって引き起こされる感染症で、初めて確認されたのは1976年のことでした。

主にアフリカの熱帯地域で発生し、人から人へと感染が広がることで、深刻な流行を引き起こしてきました。

エボラウイルスに感染すると、発熱、倦怠感、筋肉痛などの初期症状が現れ、その後、嘔吐や下痢、内出血などが進行します。

最終的には多臓器不全を起こすと報告されています。

致死率はアウトブレイクごとに異なり、過去の流行では40~90%でした。

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エボラウイルス / Credit:Canva

これまでのエボラ出血熱の治療には、静脈注射による抗体治療や抗ウイルス薬が用いられてきました。

特に「Inmazeb(インマゼブ)」や「mAb114)」といったモノクローナル抗体療法は、ウイルスに対する免疫応答を強化することで一定の効果を示しています。

しかし、従来の治療法はいずれも点滴や注射による投与が必要であり、感染拡大時の迅速な対応が難しいという問題がありました。

またコストがかかる冷蔵保存が必要であり、世界の貧困地域の一部では投与が困難でした。

そのため、より簡便で効果的な治療法の開発が求められてきました。

こうした背景の中、研究チームは経口投与が可能な新たな抗ウイルス薬「オベルデシビル(obeldesivir)」の可能性を探るため、サルを対象とした実験を行いました。

オベルデシビルは、ウイルスの増殖に必要な「RNAポリメラーゼ」という酵素を阻害する働きをもち、ウイルスの増殖を効果的に抑制し、エボラウイルスの感染拡大を防ぐ可能性があります。

この薬は、新型コロナウイルスの抗ウイルス薬として開発された点滴薬レムデシビルがもとになっており、これを経口薬にしたものです。

では、経口薬オベルデシビルは、エボラウイルスに対してどれほどの効果を発揮するのでしょうか。

経口薬が人間に近い「サル」をエボラウイルスから救う

研究では、生物学的に人間に近いカニクイザルとアカゲザルを使用しました。

エボラウイルスに感染したカニクイザルとアカゲザル(10匹)に対して、感染24時間後にオベルデシビルを投与し、10日間継続したのです。

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錠剤がエボラウイルスに感染したサルを救った / Credit:Canva

その結果、カニクイザルでは80%、アカゲザルでは100%の生存率が確認されました

一方で、治療を受けなかったサル(3匹)はすべて死亡しており、オベルデシビルがウイルスの増殖を抑える強力な効果を持つことが示されました。

さらに、治療を受けたサルでは、血液中のウイルス量が大幅に減少し、炎症反応も軽減されていたことが報告されています。

また免疫反応を引き起こし、臓器の損傷を防ぎながら抗体を生成するのを助けていました。

この薬は、従来の抗体治療や静脈注射による抗ウイルス薬と異なり、錠剤やカプセルの形で服用できるため、流行地域での配布や投与が容易であるという大きな利点があります。

また、医療インフラが整っていない地域でも、自宅や診療所で簡単に使用できる可能性があるため、エボラウイルス感染症の流行を抑える上で重要な役割を果たすかもしれません。

今後の課題は、ヒトを対象とした臨床試験であり、安全性や有効性のさらなる検証が求められます。

エボラウイルスとの戦いはまだ終わっていませんが、オベルデシビルのような新しい治療薬の登場により、人類がこの致死的な感染症を克服する日が近づいているのかもしれません。

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参考文献

Ebola May Be Cured With a Pill, Monkey Experiment Suggests
https://www.sciencealert.com/ebola-may-be-cured-with-a-pill-monkey-experiment-suggests

元論文

The oral drug obeldesivir protects nonhuman primates against lethal Ebola virus infection
https://doi.org/10.1126/sciadv.adw0659

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

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