なぜ2本足で走るトカゲがいるのか?

オーストラリア

2本足でダッシュするトカゲを見たことがあるでしょう。

エリマキトカゲは二足歩行できるトカゲであり、そのユニークな行動が度々目撃されています。

では、なぜエリマキトカゲは二足歩行するのでしょうか。

また、エリマキトカゲ以外にも二足歩行できるトカゲは存在するのでしょうか。

目次

  • 2本足でダッシュするトカゲ「エリマキトカゲ」
  • エリマキトカゲが二足歩行する理由
  • 水の上を二本足で走るトカゲ「グリーンバジリスク」

2本足でダッシュするトカゲ「エリマキトカゲ」

この動画のように、二足歩行するトカゲが、現実に存在します。

このトカゲは、「エリマキトカゲ(学名:Chlamydosaurus kingii)」です。

オーストラリア北部、ニューギニア島南部に生息しており、全長は約90cmです。

名前の通り、首周りには大きなフリルを持っており、普段は折りたたまれています。

ただし脅威を感じると、フリルを展開して自分を大きく見せようとします。

天敵に遭遇した時以外にも、エリマキトカゲのオス同士の闘争ではフリルを展開して相手を威嚇します。

このエリマキトカゲは主に樹上性であり、1日の90%を木の上で過ごします。

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エリマキトカゲは普段、木の上で生活しており、捕食行動や逃走時に、地面を2本足で走る / Credit:Canva

それでも狩りをする時には地上に降りて、シロアリ、ムカデ、蛾の幼虫などを捕らえて食べます。

そして二足歩行が役立つのはこの時です。

彼らは木の上から獲物を探し、見つけると地上に降り立ちます。

その後、二足歩行で獲物に素早く近づき、捕食してしまうのです。

ちなみに、この二足歩行は、エリマキトカゲが天敵に遭遇した時にも活用されます。

フリルを展開して威嚇することもありますが、「敵わない」と感じると、くるりと向きを変えて2本足で逃げてしまうのです。

では、なぜ捕食時と逃走時のみ、二足歩行するのでしょうか。

エリマキトカゲが二足歩行する理由

エリマキトカゲは後ろ足が前足よりも長くなっており、これが二足歩行を可能にしています。

とはいえ、骨盤と大腿骨の構造上、大腿骨を脊椎に対して垂直に立てることができず、人間のような直立二足歩行にはなりません。

それゆえエリマキトカゲは、2本足では前傾姿勢で走ることがほとんどです。

それでもバランスを保つため、できるだけ頭を後ろに傾けたり、尾をいくらか持ち上げたりします。

では、なぜエリマキトカゲはあえて二足歩行するのでしょうか。

以前、科学者たちは、「トカゲは二足歩行の方が速く、効率的だ」と考えていました。

しかし、イギリスのケンブリッジ大学(University of Cambridge)の2008年の研究では、その考えが否定されました。

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トカゲの二足歩行は、「加速」を追求した結果だった!? / Credit:Canva

この研究では、オーストラリアに生息する16種類のトカゲを、ランニングマシン上で走らせる実験を行っており、その結果、二足歩行のランナーは、最高速度もスタミナも、四足歩行のランナーを上回ることが無いと分かったのです。

一方で、二足歩行は「加速」と関係していると分かりました。

多くの種で、二足歩行の方が四足歩行よりも、加速しやすかったのです。

研究チームは、「トカゲが加速を追求すると、重心が後方に移動し、自然に前足が地面から離れる」と考えています。

ちょうどバイクがウィリーするかのように、「加速」を求めた結果、前足が浮いてしまうというわけです。

そしてエリマキトカゲのような一部の種は、「その加速に伴う変化を受け入れ、二足歩行を定着させた」可能性があります。

確かに、「加速を追求した結果、二足歩行になる」という考えは、エリマキトカゲが捕食や逃走の際に二足歩行することと合致しているように思えます。

彼らは生きるのに必死であり、それゆえ「加速」を求めているのです。

ちなみに二足歩行するトカゲとして有名なのは、エリマキトカゲだけではありません。

水の上を走る「あのトカゲ」も有名です。

水の上を二本足で走るトカゲ「グリーンバジリスク」

二本足で走ることができるのはエリマキトカゲだけではありません。

この動画のように、水の上を二本足で走ることのできるトカゲも存在します。

そのトカゲとは、グリーンバジリスク(学名:Basiliscus plumifrons)です。

コスタリカやパナマなど、主に赤道付近の国や地域の、水辺の森林に生息しています。

全長60cmと小さく、普段は水上に張り出した木の上にいることが多いです。

しかし、驚くと水の中に飛び込みます。

そして、天敵から逃げるために水上を2本足でダッシュすることができます。

グリーンバジリスクの足には、鱗が連なったヒダが存在しており、このヒダを開くことで足の面積を広げ、水に沈みにくくしています。

ハイスピードカメラで撮影した実験では、1秒の間に何度も足を動かすことで、足が完全に沈む前に、次の一歩を踏み出していることが分かっています。

一見、軽々と水上を走っているようにも見えますが、腰が水に浸かった状態で、強引に足を前に動かしているのです。

二足歩行するトカゲの謎は、未だ完全には解明されていません。

それでも、自然界で何とか生き残ろうとする「必死さ」がそのユニークな動きを生み出していたのです。

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参考文献

Chlamydosaurus kingii Frilled Lizard
https://animaldiversity.org/accounts/Chlamydosaurus_kingii/

元論文

Why go bipedal? Locomotion and morphology in Australian agamid lizards
https://doi.org/10.1242/jeb.018044

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

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