なぜ大人になると友達を作るのが難しいのか

SNS

子供のころは、自然と友達ができていたかもしれません。

放課後に公園で遊んだり、誰かの家でゲームをしたり、特別な理由もなく毎日のように顔を合わせては仲良くなっていました。

でも大人になった今、ふと気づくと、「まわりに親しい友人と呼べる人がほとんどいない」と感じる人は少なくありません。

SNS上で誰かの楽しそうな投稿を見ては自分の孤独を感じてしまうこともあるでしょう。

そんな“大人の孤独”の実態に光を当てたのが、アメリカの心理学者ローレン・ソエイロ博士です。

彼は「なぜ大人になると友達を作るのが難しくなるのか」、そして「それをどう乗り越えればいいのか」を教えています。

目次

  • 大人の友情が難しい理由とは?
  • 大人になってから友達を作る方法

大人の友情が難しい理由とは?

画像
順風満帆の人生を送っていそうな人でも、実は「孤独」という悩みを抱えている / Credit:Canva

誰しも「人とつながっていたい」と思うものですが、実際には30代以降で孤独を感じる人が急増しているといいます。

ソエイロ博士は、ある患者がレストランで笑い合う中年女性グループを見て「自分はなぜあんなふうに人と楽しめないのだろう」と落ち込んだエピソードを紹介しています。

この女性は仕事も恋人もいて、表面的には“うまくいっている”人生を送っていました。

しかし心のどこかで孤独を抱えていたのです。

実はこれは決して珍しいことではありません。

「職場で昇進したのに誰と祝うでもない」「子どもの送り迎えの場で他の保護者同士の会話に入れず疎外感を覚える」

そんな“孤独の瞬間”は、現代の大人たちにとってごくありふれた現象です。

では、なぜ大人になると友達ができにくくなるのでしょうか?

その理由のひとつは、人生の転機によって人間関係がリセットされてしまうからです。

引越し、転職、結婚、出産、離婚など、30代以降は大きなライフイベントが多く、かつて親しかった友人とも生活リズムや優先順位が合わなくなってしまいます。

さらに、友情は家族や仕事とは異なり、強制力のない「自発的な関係」です。

努力しなければ、簡単に疎遠になってしまうのです。

画像
大人になるとエネルギーが不足し、一人での気晴らしが増える / Credit:Canva

また、時間とエネルギーの問題も深刻です。

育児や介護、仕事で疲弊していると、誰かと遊ぶ気力すら湧かなくなります。

「気軽な誘い」が、もはや負担になってしまうのです。

そして何より、パンデミックによる“友情の断絶”が決定打となりました。

アメリカの調査機関「Survey Center on American Life」によると、アメリカ人の「親友の数」「友人と話す頻度」「友人に頼る頻度」以前よりも減少しています。

感染対策のための生活や在宅勤務が、これまでのような偶然の出会いや対面での関係構築を激減させてしまったのです。

加えて、SNSによる錯覚も孤独感を助長しています。

インスタグラムやFacebookでは、他人の「楽しそうな瞬間」ばかりが目に飛び込んできます。

その結果、「他人の友情のほうが自分よりうまくいっているように見えてしまう」のです。

こうした背景が重なって、「大人の友情」は、想像以上に複雑で脆いものになっているのです。

では、この状況を打破するにはどうしたらよいのでしょうか?

大人になってから友達を作る方法

難しく感じることがあるとはいえ、大人になってからも友達を作ることはできます。

ソエイロ博士が提案するのは、“友情は育てるもの”という視点に立つことです。

もう「自然とできる」関係ではなく、努力と工夫で育む関係に変わっているのです。

画像
疎遠になっている友人に自分から連絡してみよう。相手も待っているかも / Credit:Canva

その第一歩が、「自分から誘う」ことです。

多くの人が「誘われたい」「連絡が来てほしい」と願っていますが、相手もまた同じように“待っている”可能性が高いのです。

だからこそ、自分から「久しぶりに会わない?」「最近どう?」と一言連絡を入れるだけで、関係が一気に動き出すことがあります。

もうひとつの大切な視点が、「弱いつながり」に目を向けることです。

これはカナダのブリティッシュコロンビア大学(UBC)が2014年に発表した研究に基づく知見です。

近所の人や職場の同僚だけでなく、「カフェの店員」「図書館の職員」「同じ時間帯の通勤バスの運転手」などに目を向けられます。

彼らとは一見浅い関係でも、日常的に軽く挨拶を交わしたり、ちょっとした会話を続けることで、心の満足感や社会的つながりが強化されるといいます。

画像
今ある弱いつながりを大事にしよう / Credit:Canva

実際、こうした弱いつながりを多く持つ人ほど、幸福感や安心感が高いという結果が出ています。

いきなり「親友」を作ろうとしなくても、まずは近くにいる人たちと少しずつ距離を縮めていくことが大切なのです。

さらに、同じ人に何度も会っていると、自然と親しみを覚えるようになります。

恋愛ではよくそういったエピソードを耳にしますが、実は友情形成にも同様の効果があります。

たとえば、毎朝同じカフェに通う、同じ曜日のヨガ教室に出る、社内でランチに同じメンバーと行くようにする、といった“反復的な接触”が、自然と友情を育てる土壌になります。

ここまで考えてきたように、大人の友情に必要なのは、「自発性」や「継続」だと言えます。

大人になると、友達は勝手にはできません。

でも、ちょっと勇気を出して声をかけたり、小さなつながりを育てていくことで、確かに人との絆は戻ってきます。

今あなたが孤独を感じているとしても、誰かとさらなる友情を築くことはできます。

全ての画像を見る

参考文献

Why It’s Hard to Make Friends as a Grown-Up
https://www.psychologytoday.com/us/blog/i-hear-you/202507/why-its-hard-to-make-friends-as-a-grown-up

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

タイトルとURLをコピーしました