【史上最大の冒険】イグアナはかつて「8000キロの海を渡っていた」と判明!

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動物が新たな土地へと移動する方法はいくつもあります。

しかし今回の研究で明らかになったのは、驚くべき「漂流」による大移動です。

米カリフォルニア大学バークレー校(UCB)の遺伝子研究で、南太平洋のフィジーに生息するイグアナは3000万年以上前に、北アメリカから約8000キロもの海を渡って移動していたことが明らかになりました。

これは知られている限り、陸上動物による史上最長の大洋横断移動の証拠となっています。

研究の詳細は2025年3月17日付で科学雑誌『PNAS』に掲載されました。

目次

  • フィジーのイグアナはどこから来たのか?
  • 約8000キロの海を漂流物に乗って渡っていた⁈

フィジーのイグアナはどこから来たのか?

これまで、動物が新たな土地に移動する手段としては、陸を歩いて移動する「陸橋ルート」や、翼を使って空を飛ぶ「飛行ルート」などが考えられてきました。

しかし、フィジーのイグアナはこのいずれの方法にも当てはまりません。

フィジー諸島は今から約3400万年前に海から隆起した火山島であり、それ以前は完全に水の中でした。

つまり、イグアナが自然に生息していた可能性はなく、何らかの方法で後から到達したことになります。

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フィジーのイグアナ(学名:Brachylophus vitiensis)/ Credit: en.wikipedia

これまでの仮説では「フィジーのイグアナは、南アメリカにいた個体が島伝いに移動して誕生したのではないか」と考えられていました。

しかし今回の研究では、フィジーのイグアナ(学名:Brachylophus vitiensis)が、北アメリカを原産とするサバクイグアナ(学名:Dipsosaurus dorsalis)と最も遺伝的に近縁であることが明らかになり、従来の仮説が覆されたのです。

つまり、サバクイグアナが北アメリカから何らかの方法で太平洋を渡ってフィジーまで移動し、そこに定住し始めたと考えられます。

では、どのようにして彼らは太平洋を渡ったのでしょうか?

約8000キロの海を漂流物に乗って渡っていた⁈

研究チームは、フィジーのイグアナの起源を探るため、世界中の博物館に保存されているイグアナの標本からDNAを採取しました。

具体的には、以下のような調査をしています。

・200体以上のイグアナ標本のDNA解析

・4000以上の遺伝子を比較

・系統樹を作成し、進化の分岐時期を特定

その結果、フィジーのイグアナとサバクイグアナが遺伝的に最も近縁であり、両者は約3100万年前に共通の祖先から分岐していたことが判明しました。

また、フィジーのイグアナが到達した時期と、フィジー諸島が海から隆起して誕生した時期がほとんど一致していることもわかりました。

つまり、フィジーのイグアナは新しく生まれた島々に偶然漂着し、そのまま定住した可能性が高いのです。

では、どうやってこの長い距離を漂流したのでしょうか?

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フィジーのイグアナの移動経路の仮説(青線が今回判明した実際のルート)/ Credit: UCB – Iguanas floated one-fifth of the way around the world to colonize Fiji(2025)

研究チームは、イグアナが「流木いかだ」に乗って漂流した可能性があると考えています。

例えば、次のような漂流プロセスが考えられています。

・巨大なサイクロンや嵐で倒れた木々に乗って海に流された

・イグアナは飢えや渇きに強く、数カ月間の漂流に耐えられた

・海上では、流木に生えていた葉っぱなどが餌になった可能性がある

特にサバクイグアナは乾燥に強く、長期間の食糧不足にも耐えられる特性を持っています。

そのため、8000キロという途方もない距離を漂流することも可能だったと考えられるのです。

これまで、カリブ海のイグアナが短距離を漂流して別の島にたどり着いた例は報告されていました。

しかし、これほど長距離の漂流移動が確認されたのは今回が初めてであり、これは「陸上動物による史上最長の大洋横断移動の証拠である」と研究者は話しています。

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フィジーのイグアナ/ Credit: UCB – Iguanas floated one-fifth of the way around the world to colonize Fiji(2025)

この結果を受けて、研究主任の一人であるジミー・マグワイア(Jimmy McGuire)氏はこう述べています。

「イグアナが北アメリカから直接フィジーに到達したなんて、とても信じがたい話でした。

それだけでなく、私たちの研究は、現在フィジーが存在する場所に陸地が現れるとほぼ同時に、これらのイグアナがそこに到着した可能性を示唆しています。

移動の正確な時期はともかく、この出来事自体が驚異的なのです」

フィジーのイグアナは様々な偶然が重なって誕生した奇跡的な種であると考えられます。

しかし不幸にも、フィジーのイグアナは現在、生息地の喪失やペット市場への密輸などで絶滅の危機に瀕しています。

研究チームは今後、フィジーのイグアナの保護活動を進めるためにも、調査を続けていく予定です。

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参考文献

Iguanas floated one-fifth of the way around the world to colonize Fiji
https://news.berkeley.edu/2025/03/17/iguanas-floated-one-fifth-of-the-way-around-the-world-to-colonize-fiji/

Iguanas sailed one-fifth of the way around the world on rafts 34 million years ago
https://www.livescience.com/animals/lizards/iguanas-sailed-one-fifth-of-the-way-around-the-world-on-rafts-34-million-years-ago

元論文

Iguanas rafted more than 8,000 km from North America to Fiji
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2318622122

ライター

千野 真吾: 生物学出身のWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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