Footage claimed to show a Unitree H1 (Full-Size Universal Humanoid Robot) going berserk, nearly injuring two workers, after a coding error last week at a testing facility in China. pic.twitter.com/lBcw4tPEpb
— OSINTdefender (@sentdefender) May 4, 2025
「人工知能(AI)やロボットは便利だが、制御不能になることはないのか?」
そんな問いを改めて考える出来事が中国で起きました。
SNSで拡散された動画には、試験施設の人型ロボットがクレーンに吊るされながらも突如として腕を振り回し、作業員が慌てて逃げる様子が記録されていました。
この映像を見てある人は、「映画『ターミネーター』のタイムライン1日目だ」と揶揄しています。
目次
- 突如として腕を振り回す人型ロボット!作業員は間一髪で回避
- なぜ「人型ロボット」は暴走したのか?
突如として腕を振り回す人型ロボット!作業員は間一髪で回避
先週、アメリカのソーシャルメディアプラットフォーム「Raddit」にて、1つの衝撃的な動画が投稿されました。
おそらく中国と思われる試験施設にて、人型ロボットがクレーンに吊るされています。
そして近くの作業員2人がコンピュータを操作していると、急にこの人型ロボットが起動。
クレーンに吊るされたまま腕を振り回して、作業員を襲うかのような行動を起こしたのです。
Footage claimed to show a Unitree H1 (Full-Size Universal Humanoid Robot) going berserk, nearly injuring two workers, after a coding error last week at a testing facility in China. pic.twitter.com/lBcw4tPEpb
— OSINTdefender (@sentdefender) May 4, 2025
まさに「人型ロボットの暴走」とも言える光景ですが、作業員たちはすぐにその場から離れ、ロボットの攻撃を逃れることができました。
その後は背後から近づき、無事ロボットを停止させることに成功しています。
この動画はSNSで爆発的に拡散されており、多くの人の関心を集めています。
まさに「ロボットやAIの反逆」を連想させる光景であり、人々は、そのテーマを扱った映画シリーズ『ターミネーター』のようだとコメントしています。
では、今回このような事件を起こしたロボットとはいったいどんなロボットなのでしょうか。
映像からすると、ロボット開発企業Unitree Roboticsのヒューマノイド型ロボット「H1」のように見えます。
2023年に発表された「H1」は、身長180cm、体重47kg、最高時速は5.5m/s(約20km/h)というスペックの人型ロボットです。
H1の内部には、高性能AIチップと多数のセンサーが搭載され、外部環境をリアルタイムで解析しながら自律行動する能力を持っています。
では、今回の出来事は、単なる技術的エラーだったのでしょうか?
それとも、もっと根深い問題があるのでしょうか?
他の例も見てみましょう。
なぜ「人型ロボット」は暴走したのか?
「Chris Wabs」というYouTubeチャンネルでは、今回の出来事の原因が、「ロボットの誤認識」にあると推測しています。
ロボットはスタンドに吊るされていたため、これがロボットのバランス感覚や方向感覚に影響を与え、ロボットは自分が落下していると認識。それを修正するため「激しくもがくかのように」反応したのかもしれない、というのです。
または、近くの作業員が実行したプログラムが期待どおりに作動しなかった、というだけのことかもしれません。
いずれにせよ、今回の出来事が『ターミネーター』に繋がることはなさそうです。
とはいえ、人型ロボットの性能が高まるにつれ、その危険性が増すことは事実です。
切れ味のよい包丁の用い方を誤れば、より深い切り傷が生じるのと同じです。
ちなみに、2025年2月に投稿された動画では、同じく人型ロボットが来場者を威嚇する姿が映っており、すぐさま警備員に拘束されています。
Chinese AI robot goes rogue and attacks a person before getting shut down! 🇨🇳 🤖
Just a little preview of our bright future.. pic.twitter.com/esZRSWOBJP
— Global Dissident (@GlobalDiss) February 20, 2025
このように、AI搭載型ロボットの「意図しない動作」もしくは「暴走」は、今に始まった話ではありません。
過去にも、家庭用ロボットが誤作動を起こして家具を破壊した例や、AIチャットボットが差別的な発言を繰り返すといった問題が報告されています。
しかし、今回のような人型ロボットの暴走は、私たちにより強いイメージを与えます。
なぜなら、私たちの脳は「人間に似た存在」が暴れる姿を、単なる機械よりも強い恐怖として受け取るようにできているからです。
これは「不気味の谷現象」と呼ばれる心理的反応で、ある程度人間に似たロボットが逆に不快感や恐怖を引き起こすことが知られています。
そしてその感情は、単なる生理的反応にとどまらず、「このロボットは自我を持ち始めたのでは?」という誤解すら誘発する可能性があります。

現時点でのAIには「意志」や「悪意」はありません。
それは今回の事件でも同じです。
とはいえ、重要なのは「人間側の認知」です。
たとえ中身がただのアルゴリズムでも、人間に似た姿で危険な動きを見せれば、「このロボットは危険だ」「支配されるかもしれない」と感じてしまうのです。
こうした認知的不安は、今後AIやロボットが社会に普及する上で、大きな障壁となり得ます。
私たちは今後ますます、「どうすれば人間は安心してロボットと共存できるのか?」という問いと向き合っていかなければならないのです。
参考文献
Why did this humanoid robot go nuts and nearly injure its handlers?
https://newatlas.com/ai-humanoids/humanoid-robot-nearly-injures-handlers-unitree/
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部