あなたは映画館に足を運んだとき、「早く本編が始まらないかな」と感じたことはないでしょうか。
最近では、海外の映画館で本編前の広告時間が劇的に増加し、一部では30分以上も流されていることが話題になっています。
本編を楽しみにしている人々のイライラは我慢の限界に達しています。
なぜ、こんなにも広告が長くなってしまったのでしょうか。
目次
- 映画館の「広告の長時間化」で人々がイライラしている
- なぜ本編前の広告が長くなるのか?インドでは罰金処分も
映画館の「広告の長時間化」で人々がイライラしている
上映開始時間ピッタリに席に着いたはずなのに、なかなか映画が始まらず、延々と広告が流れ続けるのを見てイライラしたことはないでしょうか。
実は最近、映画館での本編前広告がどんどん長くなり、多くの観客を苛立たせているようです。
日本では、映画館での広告は10〜15分程度が一般的です。
しかし、海外ではこの時間がさらに長くなり、20〜30分の広告が当たり前になりつつあります。

特にイギリスやアメリカの映画館では、映画本編よりも長いと感じるほどの広告が流れるケースもあり、観客の不満が高まっています。
ある映画館の共同経営者であるグレゴリー・リン氏も次のように述べています。
「先週、妻を連れて『ブリジット・ジョーンズの日記』を見に行きました。
しかし、映画が始まるまで29分間、まったく意味不明な映像を見ることになりました。
広告が15~16分以上、その後に予告編が13分ありました。
私に言わせれば、とにかく多すぎます」
彼は「私は映画館に映画を観に来ているのであって、長々とした広告を観るためではない」と続けています。
この体験と言葉に同意する人は多いでしょう。
では、どうして映画上映前の広告が長くなっているのでしょうか。
なぜ本編前の広告が長くなるのか?インドでは罰金処分も
本編前の広告が長くなった理由はいくつか考えられます。
例えば、上映時間の調整や他作品を見てもらうためのアピールなどがあります。
そして一番大きいのは、映画館の経済的な事情でしょう。
特にパンデミック後、多くの映画館は観客動員数の低下に直面しました。
サブスクリプション型のストリーミングサービスが普及し、映画館に足を運ぶ人々が減少する中、映画館は新たな収益源を求めて広告の時間を延ばすことで広告主からの収益を増やそうとしています。

しかし、私たちが感じているように、この戦略が逆効果になっている可能性も指摘されています。
観客のフラストレーションが高まり、映画館離れが加速するリスクがあるからです。
SNSや映画ファンのコミュニティでは、「もう映画館で観るのがバカらしくなった」「広告を避けるために、わざと上映時間の20分後に入るようにしている」といった声が多く見られます。
特に高額なチケット代を払っている観客は、「高いお金を払っているのに、なぜ広告を見なくちゃいけないの?」と不満を感じてしまいます。
また、2025年2月にはインド最大の映画館チェーン「PVR-INOX」が政府から罰金処分を受けたことも話題となりました。
この映画館チェーンでは、上映開始時刻と実際の映画開始時刻が30分以上ずれていたことが問題視され、観客にとって「詐欺的な体験」になっていると批判されたのです。
では、今後映画館の広告はどうなるのでしょうか。
一部の映画館では、昔から広告の時間を変えないようにしています。
また、映画館に来る客の満足度を優先する方針へと転換することで、リピーターを増やす戦略を取る劇場も出てきました。
映画館は、短期的な広告収益を優先するか、それとも長期的な観客満足度を重視するかの岐路に立たされているのです。
参考文献
Longer pre-film ads ‘wasting time’ of frustrated cinema fans
https://www.theguardian.com/media/2025/mar/08/pre-cinema-adverts-getting-longer-and-wasting-time-of-frustrated-film-fans
Indian cinema chain sued by film-goer over lengthy pre-film ads
https://www.theguardian.com/world/2025/feb/26/india-pvr-inox-cinema-chain-fine-preview-ads
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部