【イカマジック!】一瞬で「真っ黒」から「透明」に変身できる科学的トリックとは?

イカ

イカが体の色を変えられることはよく知られています。

しかし、この動画をご覧ください。

一瞬にして「真っ黒」から「半透明」に変わる様子を見れば、彼らの体色変化の能力が想像以上に優れたものであることがわかるでしょう。

では、なぜこんな魔法のような変身が可能なのでしょうか?

その科学的メカニズムを紐解いてみましょう。

 

目次

  • イカはどうやって体の色を変えているの?
  • 何を合図に体色を変えているのか?

イカはどうやって体の色を変えているの?

イカの体色変化の鍵を握るのは「色素胞(chromatophore)」と呼ばれる細胞です。

イカの皮膚は元々、光の透過を可能にする特殊な構造をしているため、普段は半透明の色をしています。

しかし、その表面皮膚の真下には何千個もの色素胞が全身にわたって並んでいるのです。

色素胞とはひとことで言うと、中に色素を詰め込んだ袋のことを指します。

まず、色素胞の内側には弾力のある袋が入っており、その袋の中に赤色や黄色、茶色、黒色といった色素が含まれています。

ただし一つの色素胞に入っているのは一色のみです。

画像
イカの色素胞の拡大画像/ Credit: ja.wikipedia

これらの色素胞が筋肉によって伸び縮みすることで、イカの体色が自在に変化します。

例えば、黒色の入った袋が周囲の筋肉によって引っ張られて広がると、黒色の面積が大きくなって、イカの体が黒く変化して見えるのです。

反対に、周囲の筋肉が弛緩すると、引っ張られていた色素胞も縮んで色が薄まり、元の半透明が目立つようになります。

筋肉の伸縮は脳からの信号を受けた神経系が直接コントロールしており、その速度は極めてスピーディーです。

そのため、最初に紹介した動画のように、瞬きする暇もなく真っ黒から半透明へと変身することができるのです。

画像
色素胞の変化/ Credit: Deep Look(youtube, 2015)

では、イカたちは何を合図にして体色を変えているのでしょうか?

何を合図に体色を変えているのか?

イカは動物界でも「視覚」の発達した生き物です。

レンズ・瞳孔・網膜を持つなど、その構造はヒトの目とよく似ており、最初の動画に登場するアオリイカなどは視力が0.6~0.7ほどあるとされています。

現代人の多くはスマホやゲームの見過ぎで視力が落ちているので、裸眼だと普通にアオリイカに負ける人も多いのではないでしょうか?

そしてイカたちはその優れた視覚から得た周囲の環境情報を脳に送り、それに基づいて体色を調整しているのです。

例えば、背景が岩場のように暗ければ黒色や茶色に変色し、何もない海中や明るい砂地であれば光を透過する半透明を選択します。

この動画を見ると、おそらくイカが墨を吐いたからでしょう。水が黒く濁っているのがわかります。

そこで水に戻されたときは体を真っ黒に変化させ、明るい空気中に持ち上げられたときは半透明に切り替えたのだと思われます。

彼らが体色を変える目的は皆さんもすでにご存知のはず。

代表的なものを挙げますと、天敵から身を隠すためのカモフラージュです。

背景色に溶け込むことで危機を切り抜けることができます。

あるいは逆に、天敵やライバルを威嚇するために体色変化を使う場合もあります。

確かに、近づいてきた相手の体色が一瞬にして肌色から真っ赤に変わったりしたら、かなりビビりますよね。

それからオスからメスへの求愛行動として体色を変えたり、イカ同士の視覚的なコミュニケーションにも体色変化が使われたりします(仲間に危険を知らせたりとか)。

私たちのように話し言葉を使えない分、体の色を多彩に変えることで雄弁に自己主張をしているのでしょう。

全ての画像を見る

参考文献

How Octopuses and Squids Change Color
https://ocean.si.edu/ocean-life/invertebrates/how-octopuses-and-squids-change-color

The secret of a squid’s ability to change colors may lie in an unexpected sparkle on its skin
https://news.northeastern.edu/2019/03/05/the-secret-of-squids-ability-to-change-colors-may-lie-in-an-unexpected-sparkle-on-its-skin/

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部

タイトルとURLをコピーしました