残念ながら、盗まれたものが持ち主の元に戻ることはほとんどありません。
盗難事件の多くは被害者にとって一方的な損失で終わるのです。
しかし、アメリカ・カリフォルニア州で発生したある飛行機盗難事件は、そんな常識を大きく覆すものでした。
「盗まれた飛行機が“修理された状態で”見つかった」のです。
警察も頭を抱える、きわめて珍しい不可解な出来事を紹介します。
目次
- 飛行機が「盗まれ、修理され、空港に放置される」珍事件発生
- 犯人は“なぜ修理してまで”飛びたかったのか?犯人は中年女性!?
飛行機が「盗まれ、修理され、空港に放置される」珍事件発生
この事件の被害者は、カリフォルニア州ヨーバリンダ在住の75歳男性、ジェイソン・ホンさんです。
ホンさんは約30年前から、1958年製の小型飛行機「セスナ・スカイホーク」を所有し、自分の“宝物”として大切にしてきました。
最近はあまり飛ばしていませんでしたが、ときどき様子を見に空港に足を運んでいたようです。
そして2025年7月27日のこと、ホンさんは自分の75歳の誕生日を迎えた記念に、愛機に会いにコロナ市営空港(Corona Municipal Airport)を訪れました。
ところが、空港に到着してみると、飛行機がどこにも見当たりません。
「誰かが動かしたのか?」と空港中を探し回りましたが結局発見できず、混乱したまま警察に通報しました。
それから2日後の7月29日朝、ラバーン警察から連絡があり、ラバーン市のブラケットフィールド空港(Brackett Field Airport)で飛行機が発見されたとのこと。
機体には大きな損傷はありませんでしたが、コックピットにはタバコの吸い殻やゴミが散乱していました。
ホンさんは「今度こそ盗まれないように」と、飛行機からバッテリーを外して保管し、再発防止策を講じました。
しかし、その後またしても驚きの出来事が起こります。
8月3日(日)、再び空港を訪れると、飛行機がまたしても消失していたのです。
ホンさんは「バッテリーを抜いておいたのに、なぜまた動かせたのか」と困惑するしかありませんでした。
再度警察に通報すると、今度はサンガブリエルバレー空港(San Gabriel Valley Airport、エルモンテ市)で発見されたとの知らせが入りました。
このとき、コックピットには“新品のバッテリー”が装着され、ヘッドセットまで追加されていました。
ホンさんは自身の機体の飛行履歴を調べるため、航空機追跡サイト「FlightAware」を利用しました。
すると、7月中、ホンさんの飛行機は、何者かによって何度か飛行を繰り返していたことが明らかになりました。
そして翌日、ホンさんが空港で飛行機の消失に初めて気付いた、という流れです。
この出来事は、「盗まれて→無断で複数回飛ばされ→新品のバッテリーやヘッドセットが追加され、空港に放置する」という珍事件だったのです。
犯人は“なぜ修理してまで”飛びたかったのか?犯人は中年女性!?
この事件の最大の特徴は、犯人が単に盗んで使うだけでなく、機体の部品を自腹で購入・交換し、メンテナンスしてから空港に返却している点です。
例えば、新品のバッテリーやヘッドセットは、パイロット自身が使うためのものであり、決して安価ではありません。
一般的な泥棒が金目のものを持ち去るどころか、むしろ”追加する”という異例の行動が、事件をより不可解にしています。
さらに、飛行機の操縦や整備には高度な技術が必要です。
FlightAwareの記録からも、離着陸を何度も安全にこなしていることが分かっており、犯人は明らかに飛行機の運転技術や航空知識、部品の調達能力を持つ人物です。
また、盗難防止策として外されていたバッテリーを、犯人が自ら新品に交換して再び飛行させたことから、機械的な知識や工具も持っていることがうかがえます。
警察や空港関係者も「飛行機の盗難は非常に珍しい」「奇妙な事件だ」とコメントしています。
ちなみに、空港の常連パイロットやスタッフの目撃証言によると、「40〜50代で身長約160cmの中年女性」が複数回、この機体のコックピットで過ごしていたといいます。
実際に彼女が犯人かどうかはまだ確認されていませんが、この目撃証言が唯一の“手がかり”となっています。
「なぜ犯人は飛行機を盗み、何度も勝手に飛ばし、部品を購入して修理したのか?」
その目的や動機は、いまだ謎に包まれたままです。
趣味なのか、航空技術を試したいのか、はたまた特別なこだわりがあるのか。
警察も「動機も人物も不明」としており、頭を抱える状況が続いています。
参考文献
Someone keeps stealing, flying, fixing and returning this California man’s plane. But why?
https://www.latimes.com/california/story/2025-08-08/mystery-plane-thief
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。
編集者
ナゾロジー 編集部