「誰かと一緒にいれば孤独を感じない」
この考えは誤りです。
例えば、すべての夫婦が常に幸せを感じているわけではありません。
特に、孤独感は夫婦間の絆を弱め、結婚満足度や性関係に悪影響を及ぼすことが知られています。
たとえ物理的に一緒に過ごしていても、心の距離を感じることで関係が冷え込むことは珍しくありません。
アメリカのブリガムヤング大学(Brigham Young University)の研究では、2つの心理的要素が、孤独感のネガティブな影響を和らげる可能性があることが示されました。
この2つの要素とは何でしょうか?
この研究は、2025年2月22日付の『The Journal of Sex & Marital Therapy』誌に掲載されました。
目次
- 二人で住んでいるのに「孤独」
- 「感謝」と「許す」気持ちが孤独のネガティブな影響を和らげる
二人で住んでいるのに「孤独」

孤独感は、単に物理的に一人でいる状態ではなく、主観的に他者とのつながりを感じられない状態を指します。
この感覚は、精神的・身体的健康に悪影響を与えるだけでなく、夫婦関係においても深刻な問題を引き起こすことがわかっています。
孤独感が強まると、パートナーとのコミュニケーションが減少し、感情の共有が少なくなり、結果として結婚満足度が低下するのです。
そこで、ブリガムヤング大学の研究チームは、アメリカの新婚カップルを対象に大規模な縦断研究を実施し、どんな要素が孤独感による結婚満足度の低下を防ぐ役割を果たすかを検証しました。
研究では、1614組の異性愛カップルを対象に、結婚満足度、孤独感、感謝を表す頻度、パートナーを許すこと、性関係の調和(性的な繋がりと充足の状態)レベルなどのアンケートを取り、夫婦関係の変化を追跡しました。
「感謝」と「許す」気持ちが孤独のネガティブな影響を和らげる
研究結果によると、「感謝」と「許す」気持ちが孤独感によるネガティブな影響を抑えると分かりました。
まず、感謝の気持ちを持つことで、パートナーの行動をよりポジティブに解釈しやすくなると判明しました。
例えば、忙しくて会話が減ったとしても、「相手は自分を愛してくれている。仕事が大変だけど頑張ってくれている」と考えることで、不安や孤独感が軽減されるのです。
また、相手に対して許す態度を持つことで、小さな衝突が大きな問題に発展するのを防ぐことができます。
例えば、パートナーが約束を忘れてしまった場合でも、「悪気はなかったはずだ」と考えることで、感情的な対立を避けることができます。

これらの寛容な態度が、孤独感による悪影響を防ぐのに役立つのです。
言い換えるなら、もし二人で生活しているのに孤独感で辛いなら、パートナーへの感謝や許す気持ちが足りていない可能性があるということです。
一方で、この研究では感謝や許す気持ちが「性関係の調和」への悪影響を軽減するという証拠は得られませんでした。
お互いに感謝し、許し合っているとしても、性関係において冷めた状態が続くことはあるようです。
研究チームはこの結果を当然のこととし、「性関係を改善したいなら、セラピーやパートナー同士の親密な会話を意識するなど、さらなる努力が必要」だと述べています。
結婚生活において、孤独感を完全になくすことは難しいかもしれません。
しかし、感謝と許しを意識的に実践することで、孤独感が結婚満足度に与えるネガティブな影響を抑えることができます。
もしあなたが二人で住んでいるのに孤独を感じているなら、まずはパートナーに感謝の気持ちを伝え、許す態度を持つことから始めてみてはいかがでしょうか。
参考文献
Gratitude and forgiveness appear to soften loneliness’ blow to marriage satisfaction
https://www.psypost.org/gratitude-and-forgiveness-appear-to-soften-loneliness-blow-to-marriage-satisfaction/
元論文
Loneliness Within a Romantic Relationship: Do Gratitude and Forgiveness Moderate Between Loneliness and Relational and Sexual Well-Being?
https://doi.org/10.1080/0092623X.2025.2467416
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部