隕石の一般的なイメージといえば、「地球に巨大クレーターを刻んだ恐竜絶滅の元凶」といった壮大なものを想像するかもしれません。
ですが、実際に隕石が“民家のリビングルームに落ちる”という現象が現実に起きたとしたら、信じられるでしょうか?
そんな衝撃的な出来事が、2025年6月26日にアメリカ・ジョージア州の町マクドノーで発生しました。
なんと地球より古い隕石が、ミニトマトサイズの状態で一般家庭の屋根を貫通し、リビングの床に突き刺さったのです。
この事件を調査・分析したのは、ジョージア大学(UGA)の研究チームです。
この驚くべき発表は、2025年8月8日付でUGA『プレスリリース』にて報告されました。
目次
- 民家のリビングに落ちた「ミニトマトサイズ」の隕石とは?
- 「マクドノー隕石」と命名!科学的意義と未来への教訓
民家のリビングに落ちた「ミニトマトサイズ」の隕石とは?
6月26日の午後、ジョージア州の小さな町マクドノーのある家庭では、まるで銃声のような音が家中に鳴り響きました。
住民がコーヒーを飲んでくつろいでいたところ、「バンッ!」という爆音と共に屋根を突き抜けて何かが落下。
空調ダクトをズタズタにしながら、最終的には床にめり込んで停止したのです。
調査によれば、落下物はミニトマトサイズの隕石でしたが、そのエネルギーは極めて強力でした。
ジョージア大学のスコット・ハリス氏は、「50口径の弾丸の2倍サイズの物体が、少なくとも秒速1km(時速3600km)で飛んできたようなもの」と例えます。
これは1秒間にサッカー場10面分を移動する速さです。
この隕石は大気圏突入時に”火球”と呼ばれる現象を起こし、白昼の空を明るく照らしながら地球へと降下しました。
もちろん大気との摩擦によって減速はしますが、それでもリビングの床を粉々に砕くほどの力を残していたのです。
ジョージア大学の研究チームは、この落下によって発見された隕石の約50gのうち23gを受け取り、分析に使用しました。
高性能な光学顕微鏡と電子顕微鏡による分析の結果、この隕石はLow Metal (L) ordinary Chondrite(低金属量の普通コンドライト)であることが判明しました。
普通コンドライトは、太陽系内に存在する隕石の中でも最も一般的なタイプです。
しかし今回の隕石が特異なのは、その年代です。
分析の結果、この物質はなんと45億6000万年前に形成されたものであり、これは地球より古いとされます。
さらに起源をたどると、この隕石は約4億7000万年前、火星と木星の間に広がる小惑星帯にて発生した大規模な天体衝突により飛び出した破片と見られています。
その後、長い年月を経て軌道を変え、ついには人間の生活空間にまでたどり着いたのです。
「マクドノー隕石」と命名!科学的意義と未来への教訓
このような隕石は、単なる”珍しい自然現象”として片付けられるものではありません。
スコット・ハリス氏が強調するのは、こうした実際に地球に届いた隕石を詳細に分析することで、将来的に地球に接近する可能性のあるより大きな天体への備えが可能になるという点です。
今回の小さな隕石は、ジョージア州で記録された27例目の隕石であり、実際に落下が目撃されたのは6件目という極めて珍しい事例です。
発見された地域の地名にちなんで「マクドノー隕石(McDonough Meteorite)」と名付けられました。
現在、ジョージア大学とアリゾナ州立大学が共同で、正式な登録申請を進めています。
また、隕石の一部はカータースビルのテルス科学博物館(Tellus Science Museum)にて展示される予定であり、残りは研究用途として大学に保存されます。
こうした分析・保存・展示は、隕石という存在を「過去の物語」ではなく、「未来を守るためのヒント」として活かすための重要なステップです。
ハリス氏は次のように述べています。
「いつか、本当に巨大なものが地球に接近して、壊滅的な状況を引き起こすかもしれません。
それがいつになるかは分かりませんが、もしそれを防ぐことができるなら、そうしたいのです」
宇宙を45億年以上も旅してきた巨大な物体が、私たちの生活空間に小さな石として舞い降りた今回の出来事。
それは偶然の産物であると同時に、「宇宙のリアルな脅威」を私たちに教えているのかもしれません。
参考文献
A meteorite older than the Earth landed in a living room in Atlanta
https://newatlas.com/space/atlanta-meteorite-older-earth-living-room/
Out of this world research: UGA analyzes and names new meteorite
https://news.uga.edu/uga-names-new-meteorite/
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。
編集者
ナゾロジー 編集部