「ネット荒らし」をする人の心理特性が明らかに

SNSや掲示板、コメント欄。

インターネットの世界では、他人を意図的に怒らせたり、議論を荒らしたりする「ネット荒らし(トロール)」が後を絶ちません。

なぜ彼らは、他者を攻撃し、場の空気を乱すのでしょうか?

単なるストレス発散や暇つぶしでは説明できない、深い心理的な背景があるのではないか?

そんな疑問のもと、米マーシャル大学(Marshall University)の研究チームが調査を実施。

その結果、自己愛的な性格(ナルシシズム)と悪意ある嫉妬心が、ネット荒らし行動につながることが明らかになりました。

研究の詳細は2025年5月26日付で学術誌『Behaviour & Information Technology』に掲載されています。

目次

  • ネット荒らしにつながる心理特性とは?
  • 反社会的コンテンツとの関係も明らかに

ネット荒らしにつながる心理特性とは?

「自分は特別だ」「もっと称賛されるべきだ」

こうした自己愛的な性格傾向は、誰にでも少なからず存在します。

しかし、特に自己愛の強い人は、他人の成功や注目を浴びている様子に触れると、激しい「嫉妬」を覚えることが研究で示されています。

この「嫉妬」には2つのタイプがあります。

1つは「良性の嫉妬」と呼ばれるもので、これは「自分ももっと頑張ろう」と前向きな努力につながる感情です。

一方で、もう1つは「悪意ある嫉妬」と呼ばれ、相手の成功を快く思わず、「できれば転落してほしい」「自分より下になってほしい」といった敵意や攻撃的な気持ちを生み出します。

マーシャル大学の研究チームは、アメリカの成人326人を対象に、自己愛や嫉妬のタイプ、SNSでの荒らし行為の頻度を詳細に調査しました。

その結果、自己愛傾向が強い人ほど「悪意ある嫉妬」を抱きやすく、その嫉妬心が“ネット荒らし”として表出しやすいことが明らかになりました。

具体的には、「自分が注目されたい」「他人の幸せが面白くない」と感じやすい人は、成功している人や注目を集めている人の投稿を見ることで強い敵意を覚え、それが攻撃的なコメントや煽り(トローリング)という形で現れる傾向があるのです。

これは単なる「やっかみ」や「妬み」とは異なり、自分のプライドや優越感を守るために他人を傷つけるという、より攻撃的な心理が背景にあることを意味しています。

さらに従来の研究でも、「自己愛」と「ネット荒らし」の関連が指摘されてきましたが、今回の研究はその“間にあるもの”として「悪意ある嫉妬」が重要な役割を担っていることをデータで裏付けた点に大きな意味があります。

反社会的コンテンツとの関係も明らかに

今回の研究で明らかになったもう一つのポイントは、「悪意ある嫉妬」を持ちやすい人ほど、喧嘩や規則破り、暴力的な場面など「反社会的なネットコンテンツ」を好んで見ているという事実です。

具体的には、自己愛傾向の強い人が悪意ある嫉妬を感じると、YouTubeやSNSで他人が言い争う動画や、マナー違反・炎上騒動のまとめ記事など、いわゆる「荒れた」コンテンツを頻繁に視聴する傾向が強まります。

そして、そうした“攻撃的なふるまい”を繰り返し目にすることで、知らず知らずのうちに「他人を攻撃すること」「場を乱すこと」が“普通のこと”として自分の中に刷り込まれていくのです。

このような環境は、ネット荒らし行為の「ハードル」をさらに下げ、「みんなやっているから大丈夫」「ちょっとしたいたずら」だと感じさせてしまう危険性があります。

実際、研究の統計分析でも、反社会的なコンテンツに触れる頻度が高い人ほど、SNSでの荒らし・煽り行動が多くなるという傾向が確認されています。

ただし、この“悪意ある嫉妬”や“反社会的コンテンツ消費”を経ても、自己愛とネット荒らし行動の間には依然として直接的なつながりが残っていました。

つまり、「自分が目立ちたい」「他人を挑発して優越感を得たい」といった欲求そのものも、トロール行動の大きな原動力となっているのです。

このほか、「協調性」の低い人――周囲との調和を大切にしない傾向がある人も、ネット荒らし行動を取りやすいことが示されました。

攻撃的な投稿の背景には、単なる気まぐれではなく、こうした複雑な心理や性格特性が潜んでいることが見えてきます。

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参考文献

The psychology of a troll may start with a specific type of envy
https://www.psypost.org/the-psychology-of-a-troll-may-start-with-a-specific-type-of-envy/

元論文

Inside the link between narcissism and social media trolling: the involvement of malicious envy and exposure to antisocial media content
https://doi.org/10.1080/0144929X.2025.2547922

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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