「ぼーっと過ごす時間」はスマホチェックと同じくらい楽しいと判明!

心理学

ほとんどの人は、通勤時間や待ち時間を無駄と感じ、できる限り有効に活用したいと考えています。

現代では、みんなスマホを持ち歩いているので、ほとんどの人はそんな無駄に感じる空き時間を、ソシャゲのデイリー回収や、SNS・ニュースのチェック時間に当てていることでしょう。

そのせいで、ぼーっと過ごす時間はほとんどなくなったという人も多いのではないでしょうか?

しかし、京都大学教育学研究科に所属する波多野 文(はたの あや)氏ら研究チームは、ただ座って思考を巡らすことが、スマホ利用と同じくらい楽しく有意義に感じられる事実を報告しています。

人々は「ぼーっとする時間」を過小評価し過ぎているかもしれません。

研究の詳細は、2022年7月28日付の学術誌『Journal of Experimental Psychology』に掲載されました。

目次

  • ただ座って思考を巡らす時間は、思っていたより楽しい!
  • 「考えるだけの時間」はスマホで情報をチェックするのと同じくらい楽しい

ただ座って思考を巡らす時間は、思っていたより楽しい!

多くの人は、ただ座ってぼーっと考えごとをする時間を積極的に取ろうとはしません。

これは、「ぼーっとして過ごすよりも、スマホで何かしら調べごとをした方が有用」という評価の表れです。

では、実際に思考を巡らすだけの時間は無駄でつまらないものなのでしょうか?

思考を巡らすだけの時間は、「暇」でつまらない?
思考を巡らすだけの時間は、「暇」でつまらない? / Credit:Canva

研究チームは、この点を調査するため、日本とイギリスの大学生259名を対象に、いくつかの実験を行いました。

最初の実験では、まず「20分間ひとりで座って考え事をする」ことについて、どれほど楽しめるか予測してもらいました。

この20分間では、読書や散歩、スマホを見ること、仮眠をとることなどが一切禁止されます。

ただ座ってぼーっと思考を巡らすことだけが許されているのです。

次に参加者たちは、実際に20分間座って考え事をしてもらい、その後、この20分間をどれほど楽しめたか評価してもらいました。

その結果、ほとんどの参加者が、実験前の予測よりも実験後の評価を高めました。

つまり人々は、自分が予測していたよりも、ぼーっと過ごす時間を楽しめていたのです。

実験は会議室でも狭いテントの中でも行われた
実験は会議室でも狭いテントの中でも行われた / Credit:波多野 文(京都大学)ら, Journal of Experimental Psychology(2022)(PDF)

またこの結果は、環境や継続時間には左右されないことも分かりました。

誰もいない広い会議室でも、暗くて狭いテントの中でも、実験の時間が3分でも20分でも、参加者たちは思考を巡らすだけの時間を「思ったより楽しい」と感じたのです。

では、「考えるだけの時間」と「スマホで情報をチェックする時間」を比較すると、楽しさにはどれほどの違いがあるのでしょうか?

「考えるだけの時間」はスマホで情報をチェックするのと同じくらい楽しい

別の実験では、「考えるだけ」のグループと「スマホでニュースをチェックする」グループに分かれました。

そして両グループとも、実験前にそれぞれの行為がどれほど楽しいか予測し、実験後に改めて7段階評価(1~7点)してもらいました。

その結果、最初の実験と同様、「考えるだけ」のグループは当初、思考を巡らすだけの時間を過小評価していましたが、実験後には「思っていたより楽しい」と考えを改めました

「考える」楽しさは、「スマホでニュースをチェックする」楽しさと同レベル
「考える」楽しさは、「スマホでニュースをチェックする」楽しさと同レベル / Credit:Canva

また実験後の評価は、両グループとも同レベルでした。

つまり、考えるだけの時間は過小評価されるものの、実際はスマホでニュースをチェックするのと同じくらいの楽しさや満足感が得られるのです。

ちなみに研究チームは、考えるだけの時間が、7段階評価で3~4点程度であることも強調しています。

参加者にとって思考を巡らすことは、「非常に楽しい」経験ではなく、あくまでも「思っていたよりも楽しい」というレベルだったのです。

考えるだけの時間が、大好きな趣味に費やす時間と同レベルの満足感をもたらすはずがないので、この結果は妥当だと言えますね。

大切なポイントは、思考を巡らすことが、スマホでニュースをチェックすることと比較しても、楽しさや満足感の面で劣ることはないということでしょう。

これまでの研究により、思考を巡らすことが、問題を解決したり、創造性を高めたり、人生の意義を見つけるのに役立つと分かっています。

ですから、空き時間を常に何かで埋めようとせず、ぼーっと考え事をして過ごす時間を人生に取り入れることは、より有意義な生活に役立つでしょう。

次に、何らかの待ち時間ができたなら、あえて「何もしない」ことを選択し、考え、思い巡らすことを楽しんでみるのもいいかもしれません。

きっと人にはぼーっと過ごす時間も必要なのです。

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参考文献

Let Your Mind Wander: People Underestimate How Enjoyable Waiting Is
https://www.technologynetworks.com/tn/news/let-your-mind-wander-people-underestimate-how-enjoyable-waiting-is-364205

Put down your devices and let your mind wander: People underestimate how enjoyable it is to just sit and think, study finds
https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-11058805/Put-devices-People-underestimate-enjoyable-sit-think-study-finds.html

元論文

Thinking about thinking: People underestimate how enjoyable and engaging just waiting is.
https://psycnet.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2Fxge0001255

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

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