「ひらめき」に繋がる内省の質問【5回の”なぜ?”が重要】

「やりたいのに行動に移せない」「大事だと思っているのについ先送りにしてしまう」

このような難しさを、多くの人が一度は感じたことがあるのではないでしょうか。

心理学者アリス・ボイズ博士(Alice Boyes, Ph.D.)は、こうした課題に直面したとき、「5 Whys(5回のなぜ)」というシンプルな自己分析法が役立つと教えています。

たった5回の「なぜ?」が、心の奥に潜む原因を見つけ出し、行動に移す助けを与えてくれるかもしれません。

目次

  • 5 Whys(5回のなぜ)でたどり着く、あなたの本音
  • 5 Whysを実践してみよう!コツと応用

5 Whys(5回のなぜ)でたどり着く、あなたの本音

私たちが抱える“行動の壁”や“内なるブレーキ”は、しばしば表面的な理由で説明されがちです。

けれど本当は、その奥深くに“自分でも気づいていない根本原因”が隠れていることが多いのです。

ボイズ博士が提案する「5 Whys(5回のなぜ)」は、その原因を自分の中から掘り出すための、とてもシンプルな自己分析法です。

やり方はいたって簡単。

まず、「なぜ私は○○できないのだろう?」と問い、その答えに対してさらに「なぜ?」と重ねていきます。

これを5回ほど繰り返すことで、最初は気づかなかった“本当の動機”や“自分だけの思い込み”が現れてくるのです。

具体的な例1:

では、例題を考慮してみましょう。

ある人(架空の人物アシュリーとします)が「肖像画を描けるようになりたいのに、なかなか動き出せない」という状況にあります。

彼女は次のように「なぜ?」と自分に問い、自分の答えからさらに「なぜ?」を重ねていきます。

  1. なぜ学ばなかったの?
    「大事なことに思えなかったから」
  2. なぜ大事に思えなかった?
    「仕事や育児のほうが大切に感じたから」
  3. なぜそれらが大切に思えるの?
    「それが理にかなったこと、論理的に考えて優先事項のように思えるから」
  4. なぜ合理的かつ論理的な優先事項にしか集中できないの?
    「それが安心だし、責任を感じるから」
  5. なぜ合理的でないことを優先すると不快に感じるの?
    「常に“生産的であるべき”だと感じるから」

こうして5回“なぜ?”を重ねるうちに、表面的な「忙しいから」ではなく、「生産的なことしかやってはいけない」という自分なりの思い込みに気づきました。

ここでアシュリーは、「人を喜ばせることも、十分“生産的”なはずだ」と発想を転換し、行動に移すきっかけを得ました。

この「5 Whys」の本当の強みは、“答え”そのものではなく、“問いかけを重ねるプロセス”にあります

最初の理由だけで納得してしまうと、問題は曖昧なまま。

しかし「なぜ?」を繰り返すことで、より個人的な“こだわり”や“無自覚な思い込み”があぶり出されてきます。

また、どこまで深掘りするか、どんな答えが出るかは人それぞれです。

必ずしも5回きっちりやる必要もありません。途中で「これだ」と思う“根っこ”が見つかれば、そこで止めてもOKなのです。

では次項で、もう1つの例とコツも見てみましょう。

5 Whysを実践してみよう!コツと応用

たとえ同じテーマでも、たとえ同じテーマでも、掘り下げ方や回答によって見えてくる原因が変わることもあります。

同じテーマの別の例を見てみましょう。

具体的な例2:

「なぜ肖像画を学ばなかったのか?」

アシュリーは次のように考えたかもしれません。

  1. なぜ学ばなかったの?
    「怖いから。上手に描ける自信がないんです」
  2. なぜ怖いの?
    「何をどうやって学べばいいのか分からないから」
  3. なぜ”どうやって学べばよいか”分からないの?
    「具体的なステップを自分で整理したことがないから。具体的な計画を立てたことがないから」
  4. なぜ具体的な計画を立てていないの?
    「趣味を“真剣な目標”として扱ったことがなかったから」

この段階で、根本原因が見えました。

アシュリーは、これまで「趣味には真剣に取り組むべきでない」という思い込みがあったのです。

もしこの“気づき”が核心に思えるなら、5回目を待たずして完了してもかまいません。

そして「趣味に真剣に取り組んだっていいんだ」と思いを転換することで、行動に移せます。

5 Whysを実践するポイントとコツ

こうした例にそって、実際に私たちも5 Whysを行っていけます。

コツは、「正しい答え」ではなく「役立つ答え」を目指すことです。

どんな答えが出てもOKです。“これでいいのかな?”と迷っても、とにかく書き出してみることが大切です。

自分で何度も問いかけて見つけた“答え”は、他人に言われたことよりも“自分ごと”として納得しやすく、実際に行動に移しやすくなります。

また答えに詰まったら、1〜2ステップ戻ってやり直したり、数日置いて考え直しても大丈夫です。

さらに、応用編として、「なぜ?」のバリエーションを増やすことも効果的です。

たとえば、「なぜそれがブレーキになっているの?」「なぜ他の人にはできて自分にはできないと感じるの?」「なぜ同じ悩みが何度も出てくるの?」などの質問も試してみましょう。

やりたいのに動けないと感じた時こそ、一度自分自身に5回の『なぜ?』を問いかけてみてはいかがでしょうか。

シンプルな質問の積み重ねが、思いがけない“ひらめき”や自分だけの突破口をもたらしてくれるかもしれません。

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参考文献

A Self-Reflection Question That Can Lead to an Epiphany
https://www.psychologytoday.com/us/blog/in-practice/202510/a-self-reflection-question-that-can-lead-to-an-epiphany

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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